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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第16章 覚醒のトリガー


「なんだかすっきりしたような顔をしてるね。ハルカの術式は呪いには効く呪力であっても呪詛師には効かない…オマエには安全な高専に居て欲しかったんだけれど……、」

私に少し寄ってじっと覗き込む青い瞳。角度を少し変え、へえ…、と声を漏らしながら浮かべる口元の笑み。それはもう私の変化に気付いているようにも感じる。
考えは纏まっても、私とは違う声が私の中でずっと語りかけてくるようにぺらぺらと喋っている。お喋りな人だよ、その相手をするのはちょっと面倒くさいな、ととりあえず返事はしない。
今は私を少し成長する時間をくれた悟に感謝するのが先だ、と口を開いた。

『悟、ありがとう……』
「ん?どういたしまして?」

興味深そうにずっとキスするくらいに覗く青。そんな彼に私の口は勝手に開く、というか使われた。

『"なかなかにこの小娘も面白い考えをするようだな"』

口走った言葉に私は口を手で押さえた。
先程の考えを纏まった時にふとした感覚は確かなもの。ずっと頭の中で話し掛けてくる正体は、先程試しに招待した存在。
少しだけ不思議そうな悟に私はちょっと苦笑いしながら口を押さえる手を退けた。

『……私の口は一つしかないから。虎杖の両面宿儺みたいに口は作られないしね。試してみたら随分とお喋りなご先祖様を降ろしてしまったようで……"私はそこまでお喋りな訳じゃない"ほらね、腹話術の出来ないいっこく堂みたいになっちゃったよ』

いつか見た、虎杖の頬や手の甲に浮かんだ口からの、両面宿儺のような声色の違うものじゃない。私の声帯で私の口を使って話してる。呪力を少しずつ引っ張りながらに体を共有している。
悟は少し驚き納得してサングラスを下にずらし、私の顎を軽く掴んでじろじろと角度を変えて見ている。

「あー……なるほど、これは生得領域か…!ハルカの身体だけに限定展開してる…、降霊術にほぼ近い…のかな。一族の領域から呼び出してるってわけね。口調からするとハルカの中に居るのは鎹さんかな?」

私の意思で笑った後に、鎹は私の口を使った。
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