第3章 呪術を使いこなす事
「…で、このみたらいさんは学生ではなく、こっちであんたが勉強させるって事です?」
「そうそう。ちなみに念の為に言っとくけれど、彼女が呪術をきちんと取り扱う事が出来るまでは恵、近付かない方が良いよ、末代まで相当呪われてるからさー」
体を僅かに左右に揺らし、発言と態度がちぐはぐな悟。
えっ、という顔をして伏黒は私から離れて悠仁側に移動する。私の位置からだと釘崎が一番近い状態となった。
私は少々、どういう事だと考えたけれど、閃くようにその離れた位置に移動した伏黒から、悟を見た。
『もしかして……禪院家の血族の人?』
脳裏に浮かぶは、家系図や解読しにくい書物を見ながら私に説明する悟の姿。禪院の血が混じっている、という話。
「ピンポーン、名字はキミと同じく違うけれどね」
「どういう事ですか?先生」
んー?と悟はベンチに向かって進み、私の鞄をベンチに置く。ボフ、と重い荷物が置かれ、ファスナーを開けたそこから一冊の本を取り出して見せた。
"春日家の心得"、その一冊を見せてぺらぺらと初期頃に書き込まれた、家系図を皆に分かるように見せた。
3人はそれを覗き込み、伏黒は悟を見上げる。
「春日家、って……まだ存在したんですか?」
「その子がね、春日一族の子なんだよねー、おっかない婆さんとハルカしかもう生き残ってない、絶滅危惧種なのよ」
『絶滅危惧種言うな』
ニヤニヤしながら、ページをぺらぺらと左右に捲る。どこのページかを少し迷って、筆が滑っていったそのページを開く。
悠仁から読めねぇ、という呟きが聞こえる中、サングラスをカチャ、と掛け直した悟は伏黒へと指差して言い放つ。
「春日の始まりは禪院の血を継いだ女の人が男尊女卑などクソ喰らえ、禪院家は春日の末代まで呪い続けるからな!って人から始まってるから、そこのじゅじゅちゅってなーに?状態のハルカが万が一術を使ってしまったとして、恵が大変な目に遭うよって事!」
硬直する伏黒に、私は手でナイナイ、と自身は恨みが無いことを示す。