第16章 覚醒のトリガー
この人には綺麗事は通用しないなら。
はっきりと私は言う。そんなに聞くなら、誤魔化せないのなら。もう自分に本音を隠すつもりはない、悟に打ち明ける。
『……復讐したい。私の日常を壊して、恐怖で支配して道具として扱ったあいつらが私は許せない!』
ふう、と悟はため息をついて少しだけ困った眉をする。
「私情だね、普通であればそんな理由で連れて行く事は絶対に許されることがないヤツ……で、会ったらどうしたいの?
今のオマエは領域に引きずり込む事は出来ないし、そもそもまずあいつらは殺しちゃ駄目、適切な処罰を与えないといけないんだけど?」
処罰の為に待機してる所で脱走したんだけれどね、と言う悟はちょっと首を伸ばして屋敷を見てる。目の動きからして恐らくは龍太郎が着替えて玄関に靴を履きにでも向かったんじゃないかな…。
視線が私に戻ったので悟の目を見て一言伝えた。
『……ぶん殴る。今の私にはそれしか出来ないから。駄目って言っても私、絶対に着いてくから』
「ほーんと、オマエって頑固ちゃんだね。意志がカチカチ…だからこそ、リベルタで攻められても縛りに応じなかったワケなんだけど…」
ははっ!と悟は笑って目を細める、そして私の頭をぐちゃぐちゃになるくらいに撫でまくった。
それは勘弁して欲しい、と私はそんな悟の手を押さえて降ろすと悟は私の手を取る。立ち上がらせてくれてにっこりと元気に笑う。
「分かった!僕から絶対に離れちゃ駄目ね?今度こそオマエを守り抜くから」
『……うん!』
その微笑みはとても頼もしくて、頷いた後私達は縁側から玄関方向へと合流する為に走って向かった。