第16章 覚醒のトリガー
耳から離した後にしまう携帯。各所への連絡が終わったらしい悟ははぁー…、と疲れているのが分かるため息をはいて、私を見て。ふっ、と優しく微笑んだ。
「ハルカはお留守番ね、京都か東京かどっちの高専が良い?選びな」
『何それ。一緒に行くのは?』
「駄目だ絶対に。オマエを欲しがってるヤツの居る場所に連れてくとか危険過ぎる」
じっと私を見て、悟は私の両肩に手を置いた。凄く真剣な表情だった。
「……お願い。留守番してて欲しい、頼むから」
『……孫の良い知らせを直に伝える目的がある。その為にあんな婆さんでも助けるべきじゃないの?』
難しい顔してる悟、そしてじゃり、という音で視線を向けたら龍太郎が立ち上がった。右腕の部分の服は無くなり、再生したての腕が見えている。それはなんとも不格好で。
「私も行きます、武器と服を替えて玄関に行きますのでそれまでに決定をお願いします、おふたり方」
縁側に登り、走っていく龍太郎を見届けてから悟の目をじっと見つめた。
正直、祖母を助けるだなんていうのは行くための理由。助けたいなんて思わない、むしろクリミアとして接していたマリアの方が助ける価値があるってそんな考えがある。
一緒に行く理由は復讐だ。ただの私情。私から平穏を奪っていったあいつらが許せない。ふつふつと湧き上がるものを必死に抑えてじっと悟の目を見つめてる。悟は厳しい表情で首を横にゆっくり振る。
「……ハルカ、これはオマエみたいのが首を突っ込む案件じゃないんだ」
『つまりは私が弱いから、足手まといになるって言いたいの?』
髪の白髪化は半分も行っていない。攻撃手段は乏しく、主に治療、そして僅かに身を守りサポートに徹するくらいしか出来ない。それは沖縄、二日目である夜に自身の口で悟へと話した事。
私がじっと見るから、悟もじっと見てる。お互いにお互いの瞳の奥を見合っていた。
「オマエは助けるつもりで着いて行きたいんじゃないよな?キレイゴトじゃなくて本音、言って欲しいんだけど。
春日の血族としてのケジメじゃなくてハルカとしてはどうなの?そこを僕ははっきりと聞きたい」