第16章 覚醒のトリガー
「それからご結婚おめでとうございます。やはり、許婚でも見合いでもなく、結ばれるべきは想い合う人とが一番であると……きっと、とある人もそう思っている筈」
『………うん、ありがとう』
そのとある人とはきっと龍太郎の姉の事であると私は知っている。悟から聞いたから。
悟と一緒にここを訪ねてから、許婚というポジションでありながらも関係を見守っていたひとりだった龍太郎。ちょっと悟越しに聞いた話だとクリミアとなんだかイイ感じらしいね?と耳にしてる。
悟が何件目かの電話をし始めた。口調は落ち着いてるけれど、さくさくと分かりやすくリベルタの脱走の件を問い合わせては、高専関係者に手配をしてるみたいで。
『……龍太郎、リベルタのやつらどこに行くとか言ってた?』
「いえ……ですが、マリアの"アンカー"とワイヤーの呪具を使用する所を見ると目的は明らかに呪力関係、確かまだ呪力タンクの件は保留中のハズでしたから……、」
私が吸って溜めた呪力を抽出しては溜め込んでいたタンク。確か、私とタンクを往復してた持ち運び出来るやつは分解なり解析なりしてたはず。上手く利用出来れば、呪術師にもメリットがあるからだとも聞いた。例えば、呪力を消費する術式。それの補充や結界などにも使えるかもしれないって事。まさか脱走するなんて思ってないから、まだ大きなタンクには手が回ってない…。
小さい物で手間取ってるってのに、溜め込みすぎた大きな物をどうしろと、という事で保留にされているらしい。リベルタがやったようにエネルギーにも変換出来るけれど、呪術師ならば呪具の強化なり呪術師の強化に使えないか、でもあの場にいちいち連れてくのは手間がかかる……と、上層部が揉めてるよ、とも悟経由で聞いた。
持ち運びなんて無理な大きくて動かせないタンク。行き先は推測だけれどリベルタ旧本部。
私達のやり取りを見て、悟は電話越しに伝える。
「ヨミさんとマリアさんが居るから多分、ハルカがされたみたいな呪力関連だと思うけれど、今回ばかりは目的は分からない。ただタンク周辺ではないかって話。
ちょっとハルカから吸い出した呪力量えげつないから、寺田に変な気起こされたらあの近辺が大変な事になる。引火物みたいにさ、爆発なり呪霊をぶち込まれたら都内だもん、被害でかくなるよ!京都の方にも伝えといて!」