第16章 覚醒のトリガー
「まだこっからでも龍太郎が生きてるのは分かる!ハルカ、治療!」
『ん、了解!』
悟に引かれるままに縁側から龍太郎の転がる庭へと飛び降りる。ザリッ!と玉砂利の音を大きく立てて着地して、数歩進んでしゃがみ込んだ。うつ伏せになり肩を押さえる龍太郎。小刻みの呼吸を感じ、ううっ、と呻いていて……その背に私は触れる。
視界に入るのはすぐ近くに転がる片腕。龍太郎は斬られたらしい。斬る、という行動に脳裏に浮かぶのはあの男。けれどあの男は捕まったはず、だから違う勢力…なのかな?
考える時間も無いうちに小さくミチミチという音を立てて龍太郎は失った体を元に戻した。それは呻くほどの痛みも無くなったものだから、彼はゆっくりと体を起こす。半袖にしてはちょっと長めに、そしてよく見れば脇腹辺りも斬られてた後。
腕だけじゃなく胴体も…肺辺りも斬られていたのかもしれない、となると悟が電話しなければ、もう少し遅ければ死んでいたかもしれない。
起き上がった彼の片手に携帯が握りしめられている、悟と電話したから、多分その時の。
どれくらい伏せていたのか、頬には玉砂利の跡や飛び散った血痕が着いていた。
「何があった?」
治療の終わった私の隣で悟がしゃがんで龍太郎を覗き込む。
彼は絶望をした表情で零した。
「……リベルタです」
『は?りべる、た?』
耳を疑うような単語とフラッシュバックするあの地獄の3週間。
龍太郎はここであった事を質問した悟をじっと見て続ける。
「朝、リベルタのボスが数人を引き連れてここを襲撃しました。この春日の地を守る縛りの為に、主たるヨミ様は本来離れる事の出来ない身。また、ハルカ様の居場所を口に出さない為、強制的にヨミ様は連れて行かれ、呪力回収の要であるアンカーを使えるマリアも共に攫われました」