第15章 縛りの為の呪物
『右手と左手があるでしょっ!お得意のベーションでもしておけば良いじゃないっ!』
「やだーっ!僕の手じゃなくてハルカでシコシコしたいのっ!出来れば今すぐ!テトリスばりに僕のちんこにぴったりな穴がハルカについてるからそこにハメたいの!」
『最低!』
覆いかぶさる悟の頬を片手でぐいぐい押し、拒否しつつもやがては諦めてゆっくりと支度を始める。ただ、すっごく未練がましくちらちら見て、クーン…と鳴き声を発する。そんな可愛い声出しても褒美はそう簡単にあげません。
忘れ物は無い。着替えなどは詰め込んで宅配に回して、軽めな荷物と祖母宅に持っていくお土産。
機嫌を損ねた悟も流石に部屋を出る頃には機嫌は直っていて、空港までの景色を見ながら次来る時はもう少し日数長めにしよう!と約束なんかして……。
空港でハイビスカスの首飾りを買おうとする悟を必死で止める。どっちが年上だったっけ。
『テッテーで浮かれてカチューシャ買う現象起きてるよっ!?着けるのは今だけでしょっ!駄々をこねるんじゃありません!』
「買いたい時に買うのがベストなのっ!」
『本当に必要なものかちゃんと心に問い掛けてる?脳死状態で欲しい!ってのは駄目だからね?』
……腕を組み、叱る私に赤とか黄色とか、カラフルなやつとか手にとって悩んでる悟を見る。口を尖らせる悟は全部を首に掛け、両手を宗教画の如く胸に当てている。
「これは~…必要なモノです……今こそ買うべきでしょう…」
『不必要だろ、買っていってどうすんの?飾る場所ある?ねえよ?』
ぷくぅ…と膨らむ頬。そんな可愛い顔しても駄目。買わせない。
悟は決め顔で言い放った。
「……恵の部屋に寄贈するー!」
『はい、アウトー!帰るよー』
やだー!と駄々をこねる悟からハイビスカスを取り上げて什器に戻すとその手を引っ張って先へと進む。
悟の購買意欲を抑え、引っ張りながらにハッとした。28歳児の保護者になっているという事を。
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「はいー、京都到着っ!じゃあ龍太郎君にお電話しちゃおっかな!車で迎え来て貰おーっと!……えーっと、連絡帳、りゅう、りゅう…ほい!ヒ、ポ、ポ、タ、マ、ス!」
『連絡帳じゃキーパット押しじゃないでしょ、てかカバ?なぜヒポポタマスにした?』