第15章 縛りの為の呪物
ぽん、ぽん、と何度もラリーを続けて悟は両手でボールを手に取る。そして腋に抱えて私の元に近付いた。
「……なんだかんだ言って、あの婆さんも春日の一族として振り回されて寂しい人生送ってんのよ。孫の良い知らせくらいはして良いと思うよ?血縁はそう簡単にスパッ!って切れないし」
『……うん』
……祖母からの私の扱い、道具のような感じだったけれど。リベルタとそう変わりない扱い。それでも一応は切ることの出来ない血の繋がりの家族。
悟も私の知らない所で裏であれこれやってるのだから、あんな祖母でも苦労したとか、大変な目に遭ったとか悟はなにかを知っているのかもしれない。
俯きかけていた顔を上げて悟を見上げる。サングラスの奥の瞳が少しだけ眩しそうに見えた。
『分かった、東京に帰りがてらちょこっと挨拶する程度ね、ほら…龍太郎とかにもお礼言わないとだしねー』
まだ直接会ってお礼を言ってない。悟は私がふふっ、と笑うと同じ様に笑ってくれる。
「……よーし!まだ沖縄を満喫しきれてないでしょ!海入ろっ海!」
上着を脱いでぽい、と浜辺に投げる悟。
あれだ、ただいまー!って帰ってきた子供が靴下を脱いでその辺にポイポイ投げる光景に見える。
『やんちゃかぁ~?……まっ!入るけどっ!……ちょっと待って』
ビーチボールを手に取って、それにシースルーのパレオと悟の投げた上着を被せて、私はまだ海に入らずに待ってる悟の元へと走る。
「オマエは泳げんの?」
『まあ、人並みに?』
合流すると差し出される手に重ねる手。
ふんわりと優しく微笑むから少しドキッとしたけれど。
「楽しくて夢中になるのも良いけど、海ん中に指輪落とさないでよ?ドジっ子ハルカなんだからそこ注意してねー」
『……注意します』
ま、指輪くらいいくらでも換えはあるけど。そういって悟はバシャバシャと海の中へと連れて行った。