第15章 縛りの為の呪物
『……あのさー、めっちゃ腹に凶器当たってんだけど?』
「んあ?当たってるんじゃない、こちとらわざと当ててんのよ、大きいからさ」
『抱きついてる時はちょっと配慮して貰えるとよろしいのですが??』
至近距離で真顔の悟がそのままの顔で。
「……じゃあ抱きつく時は僕の大太刀、五条派銘は悟な立派なモノをオマエの鞘に収めとく?」
『おい、盛り過ぎだ短刀、ムード考えろー?』
……大きいのには変わらないけれど。
ちょっと口を尖らして小さくないもん!とスネた悟はキス出来るくらいに至近距離で、優しく笑って耳元で囁く。
「……ねえ、ハルカ。このまま僕ら逃げ出しちゃおうか?」
『ん、何を急にさぁ…?』
腹部に当たる、熱くて硬い存在を感じながら体重を掛けて抱きつく悟は耳元で更に囁く。顔は見えなくて本気かどうか判断出来やしない。弱音を吐いているのか、誘惑しているのかも分からないけれど、今はとにかく悟の言葉に耳を傾けたい。
ぽつりぽつりと零す悟の髪を私は何度も撫でていた。
「教師であることも、呪術師であることも、五条家当主であることも何もかも全てを捨て去って、ふたりきりで誰も僕らを知らない土地にでも駆け落ちでもして……ずっと一緒に生きて行こうか?現代のアダムとイヴみたいにふたりで生きて、家族を作って生活するの」
『………きっと、そんな事をしたら悟は後悔する人生になると私は思うよ?』
「……そっか」
ただ静かに、密着した身体は離れて再び入るべき場所へと充てがわれたもの。
まだたった一回しか交わっていない、今夜は何度重ねるんだろう?期待をしながら私は"来て"と悟を煽ってしっかりと私の奥まで繋がった彼の背に離さないと、腕をまた回した。