第15章 縛りの為の呪物
今は現地に行くために急いで居るけれど、到着したらとりあえずはホテルで眠って次の日はまるまると自由で。最終日はのんびりしながら帰るという悟式のプラン。
本来ならば別のデートで婚姻届を提出していただろうけれど、とっくに提出されているから役所に行くことはなく。
「ちょっと目を離すと迷子になりそうだね、キミ」
『迷子って年じゃあないんだけどな~…』
ははは、と笑われながら腰に手を添えられて、時々「こっち」とナビをされながら。きょろきょろとしてれば悟に笑われたのでさっと口を隠す。高専では慣れたけれどこういう所でははしゃいだら駄目だ。
少し残念そうに悟は私に話し掛ける。
「そう言えばファーストクラスなんだけれど大丈夫?乗る飛行機ダイヤモンドサービス対象外のやつなんだよねー…」
『はーすと、くらす……?』
ほぼ異国の響き。
ぽかんとする私を腰から肩へと移された手、そのまま押しながら進む悟。前方からスタッフがキビキビとした動きで私達のチェックインが済まされていく。
五条悟様と五条ハルカ様でいらっしゃいますか、だなんて言われて固まる。慣れない名前と今までにない対応のされ方に戸惑った。ファーストクラスて。
私今までエコノミーでも充分楽しめてたのにこの男、ファーストクラスでも大丈夫?って言ってきてた!ダイヤモンドサービス対象外?今以上の何かをされるっていうの?脳内に一度体験した、悟の領域展開の世界が広がってる。宇宙空間、情報が完結しない。スペースキャット状態。
慣れた様にさくさくと手続きをした悟は私の頬をぷにっ、と指で押し現実に戻させる。
『……あ』
「もー…フフッ、ウケるー!こういうのも慣れてってよー?」
『こちとらしょっちゅう乗るわけじゃないしファーストクラス自体初めてだっつーの!』
真顔の悟。マジ?と。えっファーストクラスってそう乗らない、よね…?
もう乗れるからと一緒に進みながら、時に人にぶつからないように悟は私を引き寄せる。