第15章 縛りの為の呪物
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にぱにぱ。
ハッ!と緩くなった自分の表情筋に気が付いては自身の頬を挟むようにパン!と叩き、再びゆっくりと緩んでいく……にぱにぱ。
そんな私の奇行を見て野薔薇は呆れるように笑っている、授業が終わって帰りのホームルームにて。
「収まることなくその日が近付くほどに悪化してったわね……ハルカの緩む顔は」
『仮面で隠したかったけど駄目だったし晒したままにするしか無かったからねぇー…残念な事に』
悟に私から『顔、緩む!助けて!隠したい!』と皆の前で強請ったら、丁度良くどこかで見たような仮面をドラえもんの如く背後からさっ!と出して渡してくれた事があった。
それはざらついて少し重い、ヒビの入った仮面。
それを手に取り"虎杖ィ!私はニヤケ顔を隠すぞ!"と着けようとしたら背後から伏黒に両腕を拘束され、野薔薇に仮面を取り上げられてしまった。"人間を止めるつもりかっ!"……と。悟が持っていたのはとある呪物、石仮面というもののレプリカ。
ああ、どっかで見たことあった仮面だ、と思ったけれど重さにレプリカ性を感じなかった……何故悟がそれを持っていたかは全くの謎。
自分を隠すこと無くオープンにした日(久しぶりの登校)から2、3日くらいはいじられたけれどこれが標準のような扱いを受けて何も言われなくなってしまった。皆の適応能力よ。
体術の時はへらへらしてんじゃねえ!と始めこそは真希に言われたけれど、その浮かれた状態で両親直伝の不良格闘技で先輩や虎杖と戦っていたら最終的にサイコパスと言われてしまった。ドウシテ……。
そしてやってきた週末の今日。この後軽めの荷物を持って高専から車で羽田まで送って貰い、沖縄に行くのだ。例え今日まで我慢出来たとしても今日になってしまったら通常の顔では居られない。悟も教室に一緒に居るけれどいつも笑ってるから異様なのは私だけだ。
出発前にお土産に期待してっから!という虎杖の言葉から急なリクエストを受け始めてる。
「想い出話じゃなくて形あるものなら俺は何でも良いよ~!むしろ任せる!」
『オッケー、美味しいものをチョイスしときます』