第14章 鮮やかな日々よ
明日も学校や仕事でもある中で控えめな飲み会が始まろうとしていた。
夏油も呼びかけようとした所で悟が自ら呼びかけると言ってくれたけれど、都合が合わないから今回は来れないそうで。こういう時だからこそ話をしてみたかったんだけれど。
ご機嫌な悟がジンジャエールのグラスを持って私含む3人に話しかける。
「いつもキミ達、こういう場で乾杯とかしちゃう感じ?」
『いーや、普通にお疲れ様でーすくらいで飲み始めるけど?』
「飲めれば良いでしょ」
「同じく」
まるで小鳥の口みたいな唇で、ピヨとでも鳴きそうな悟。
持ち上げたグラスをそのままカウンターにダン、と下ろした。アルコールが入ってないのに既に酔ってるみたいだけれど、これが五条悟という男。つまりはいつも通り、シラフの酔っぱらい。
「カーッ!キミ達つまんなくなーい?こういう場でしょ?やっぱり乾杯とか普通するでしょ!?」
「何故下戸のあなたにそう言われなきゃならないんですか雰囲気酔っぱらいなんじゃないですか?」
七海が悟に突っ込む中隣の硝子がグラスを上げてくい、と飲み始める。釣られて私もグラスを持って飲んだ。
隣の悟が、あーっ!と言ったけれど気にしない。3口ほど飲んでグラスを置いた。
『くぅ~っ!……1ヶ月振りのアルコールが五臓六腑に染み渡るわ…』
「そりゃあ飲めない環境だったろうしね、ハルカもお疲れ様。明日に響かない程度にしなよ?」
と言っても今晩はハルカの財布から出てるんだけれど、と硝子は次の酒をどれにするか吟味を始めてる。
カウンターの両端の男性陣の揉めるほどでもない揉め事(?)を中断した悟が、次のお酒を選び始めた私の肩を揺すった。
「乾杯しないで飲んだっ!なんで飲んじゃうのっ!?僕、せっかくだからこういう所で乾杯したかったなー!ハルカ救出を祝ってとかリベルタ解体祝いとかさー!というか普通ふたりの幸せを願ってとかしない!?かんぱーいって!」
ちょっとサングラスの奥の瞳が濡れている、ような気がする。仕方ない、ここは悟のわがままにたまには付き合ってあげよう。鞭ではなく飴の時間、あまり塩対応過ぎると後で酷い目に遭わされるし。想像したくないけれど、きっと眠れない夜にされる未来もあるんじゃあないのかな。
飲みかけのグラスを持ち、悟のグラスを確認した。