第14章 鮮やかな日々よ
127.
カラン…、とドアベルの音。入店してすぐ見えるカウンター席。
やや暗めではあるけれど、オレンジのペンダントライトに照らされたカウンターテーブルは渋く木目を照らしてる。
落ち着いた声色でスタッフがいらっしゃいませ、と挨拶をして先に中に入った悟が指を4本立てて、カウンターで!とスタッフに注文した。
こうなった経緯は私が奢ります!と言って硝子と七海をバーへと誘ったワケで。そしてそこにおまけの如く下戸である、お酒を一切飲めない悟も着いてきていての計4人での来店だった。
案内というよりもカウンターは空いているから手前で座った悟を基準に、奥から七海、硝子、私、悟の順でカウンターに座る。4人だしボックス席でも良いような気もするんだけれど。
『伊地知さんも誘ったのになぁ……来れないんですもんね』
メニューを軽く見て呟きながらまず始めにシャンディガフに狙いを定めた私に、ふたつ隣の七海が呟いた言葉を拾う。
「しょうがないでしょう、伊地知さんは用事があるそうなのですから。別の機会に誘えば良いと思いますよ」
「今日来られなかった分、後で差し入れでも持って行ってあげな」
硝子の提案にうんうん、と頷く。甘いものでもなにか持っていってあげよう。甘いものに関しては常にスペシャリストも側に居るし、と隣の悟を見る。任務でちょっと遠出する時に悟にお土産を買ってきて貰おう……ていうか、明日からの沖縄旅行にお土産を買えば良いのか…!
悟の横顔を見ていたらこっちに向く顔。
「…?どったの?」
……この人下戸だからアルコールは飲ませちゃいけない。絶対に。一度体験して理解してる、そして周りからも聞いている。今度こそアルコール無しのものにして貰わないと。
『なんか飲むもの決まったの?』
「んー?ちょっと迷ってる」
『オレンジジュース?コーラ?あっメロンソーダかな?』
以前メロンソーダと間違えてインアルなミドリを飲み、顔を赤くして酔っていた悟。ソフトドリンクのメニューを見ていたので以前の事を思い出しながらちょっとからかうと頬をぷくっ、と膨らましていた。絵に描いたようなカニの口元みたいになってる。
「孕ますぞ?」
『駄目です。
あ、硝子さんゴッドファーザー来ましたよ』