第14章 鮮やかな日々よ
いやあ、愉快!そんな風に思っていたら悟が片手で私の腕をがっちりを強めに掴んだ。
おっ、なんだなんだやる気か?ふすんっ、と鼻でちょっと真っ赤な悟を小馬鹿にしつつ、照れて真っ赤な悟に対して沖縄にふたりで行ける事に浮かれる表情の私は彼を覗き込む。
赤いのは赤いけれど、目元と口元はまるでケダモノの様に今にも食らいつきそう。
コヒュ、と私の喉が鳴って一気に表情が消えていく感覚。
「……煽ったのはオマエだからな、責任取ってもらう」
『…あれ?』
ぐいぐいと引っ張られるのは進行先ではなく、路地裏…小道の方。上には看板が掛けられていた。
それを私が目撃した瞬間の表情を見た悟は、にっこりと笑ってる。肉食動物が捕食する獲物を巣へ持ち帰るような笑み。
「水着とかゼクシィ買いに行くよりもまずはかるーく…最低1時間は妻を愛でないと行けないみたいだからなー?」
『……あっやべ』
本気のケダモノの目してらぁ。小道の行き先はラブホテル、調子に乗れば罰が当たる。
私をぐいぐい引っ張る腕に空いた手を触れて外そうにも外れない手。熱く少し汗ばむ大きな手はしっかりと獲物である私を捕まえたままに、ずんずんと進んでいくのは処刑場。
これ、めちゃくちゃに抱き潰される。冷や汗が出てきた。
「たっぷりと愛してやるよ?ハニー?」
『お、お手柔らかに……オネガイシマス……』
べーっ、と意地悪そうな顔が舌を出す。手加減はないらしい、うわっ終わったぁー…。
ホテルに入ってシャワーを浴びた後、足腰が子鹿のようになるまで、私は2時間ほどホテルを出られないハメになった。