第2章 視界から呪いへの鎹
『……いえ、ここから我が家に帰るのは生きるために。先祖が命を散らす事を美徳としたり、初代の恨みの為に死ぬことを重ねるのが私には理解出来ない』
「馬鹿にするのか、この孫はっ!」
「おーコワイコワイ…」
怒りを露わに、私を怒鳴りつけた。悟は私達のやり取りを傍観し、龍太郎もただ見守っている。止める人は居ない、止めるつもりもない。だからこそ続けられていく。
今やり取りしているのは春日の血を継ぐ、たったふたりの争いだ。私としては春日の血を受け継いでいても、道具としてここに戻るつもりなんて無い。
その目の前の祖母に自分の意見を言うだけ言うことにした。
『馬鹿にしてるわけじゃないけれど、時代に沿わないやり方だし、ただ消耗するだけじゃこれ以降の世代はやってけない。
今いる春日の血は私とおばあちゃんでしょ?私にどうさせようって思ってるの?おばあちゃんまさかとは思うけれど流石に閉経、してるでしょ?ならおのずと目的がさー、見え見えなんだよね、龍太郎と待ってるって言ってるしさ』
ふるふると震えてる祖母。何かが刺さったんでしょう。
ちょいちょい、と隣を人差し指で突いて見上げる。やり取りをちょっと楽しげに見学してる悟が私に気付いたので手招いて耳打ちをする。
『ねえねえ、自称最強なんだよね?』
ただの自称ならバッカモーン!と怒っていたけれど、力があったり、呪いを余裕で祓ったりしていたから、ホントに最強なんだと信じたい。
その私の耳打ちを聞いた悟はニヤケ顔で一度頷く。
「フッ、まあね。自他共認める最強だけど?」
『重い荷物だけれど、それ背負ってここからバス停のある道路まで走れる?』
「余裕余裕……で、なんで?理由は?」
『最低な捨て台詞吐いてトンズラしようかと。ここに戻らない勢いくらいの』
斜め上のグラサンの奥は細められて楽しげだ。頷いて、"了解"と言って姿勢を正した。
そのやり取りを見て、少し顔を震えさせる祖母。
「相談事は終わりか?
──これまでの春日の重ねてきた血の努力を、命の犠牲をお前は五条悟と共に嘲笑うっていうのか?ハルカっ!」
「え、僕巻き込まれてる?」
私はちら、と敷地内の墓地のある方向を見た。ここからじゃ見えないけれど。