第14章 鮮やかな日々よ
『堕ろしたりはしないよ、選り好みなんてしない。
……"春日"の血ときちんと向き合えるように、長生き出来るようにその方法を教えていく……とか』
「ハルカ、でもな、母さんはな…、」
なんとかその考えを改めさせようと、少し腫れ物にでも触るかのような態度の父。
「彼女もそう言ってるしそこはコウノトリさんにお任せしましょ?」
それは卒業後の話であって今焦って話す内容じゃない……よね?腹部に触れていた暖かくて優しく撫でていた手は去っていく。
そして肩に回された腕が私から離れて行く時に、さり気なくさら…と髪を撫でていく悟の手。
『そもそも不幸になるとか言うけれど母さん、私産んでんじゃん。父ちゃん人のこと言えないでしょ?』
「だってそれはな、リョウコが、」
『色々あって母さんに直接聞いたよ?父ちゃんが猛アタックしてきていつの間にか兄貴産んでたーって。お互い不良チームなのにさー押しが強すぎるってさ!』
黙った父は兄とアイコンタクトして、こっちをぽかんと見てる。
これは深く突っ込まれると話が長くなりそうだからそろそろ話を締めたい所。死人に口なし、この知り得ることのないはずの事実を何故知ってるかなんて初めから現在まで説明するのは嫌だ。変に怯えられたり、呪いの存在を教えてはいけないし。幽霊って事くらいにか伝えてないし……。
というか、そんな事よりも兄が悟の事を全然認めてくれないのをなんとかしたいんですけれど。
こっちからしたら悟は猛犬注意の家のドーベルマンに見えてるだろうけれど、兄からはどうなのやら。
特性、いかくを発動中の兄の方向を見ると私の視線に気付いた兄は表情がふにゃふにゃしている。面倒くさいシスコンではあるけれど、学生時代の多くを守って貰えた実績があるから邪険には出来ないし。
『兄貴ー、私は悟と一緒になっても良い?』
「駄目だろ」
……即答だし。
こうなれば実力での勝負が一番。喧嘩だと悟が強いから結果が見えるし手軽なものはないかな…スマブラとか…トランプとか……いや、ここはアレだな。
ふと思い出した数ヶ月前の事。それを兄に提案してみる。多分差が無さそうだけれどこれが手っ取り早いだろうし。
『じゃあ父ちゃんと同じく悟と腕相撲でもしてみたら?それで力比べすりゃ強いって分かるんじゃない?腕相撲で彼が勝ったら良いでしょう?』