第14章 鮮やかな日々よ
どんなやりとりがあった、なんでこの会話で推測が出来る。悟は私の父に男系だと…女系を産まない家系だと言っていたのだと思う。
しん、とした一呼吸の間。悟は私のお腹に触れたままに続けた。
「もしも将来的に僕とハルカの赤ちゃん出来たって言って皆で楽しみにしたとしてだよ?病院でさー…ハルカのお腹の中が見れるようになりました!…って時にちんちん付いてないから女の子ですーって分かったらどうすんの?大事な娘さんから引き摺り出すの?楽しみにしてたのに?」
「……」
なんとも言えない顔の父と、きっと私と同じくやりとりを知らなかった兄が察してきている顔。
「僕としては授かったものの性別なんてどっちであろうと嬉しいし、僕もハルカも男だから、女だからって差別しないで育てるけどさ~…」
引き寄せられたままに悟を見ると、優しげな表情の悟は片手でお腹を擦りながら言う。別にお腹にいるとかじゃない、何も入って無い。
……お腹が空いている時間であるからお腹が鳴らないようにしてるけれど。
「ハルカはさ、学生生活を終わらせた後にもしも……何番目か分からないけれどお腹に女の子が出来たとするじゃん?」
『何番目か……』
サッカーチームの話のくだりを思い出す、この人マジで腹を休ませなさそうな予感がする。閉経するまでどれだけ仕込むつもりなのかがおっかないんですが……。
まあ、そのいつかやってくる家族が増える"もしも"を考えて頷く。
「で、そういう時はハルカはどうしたい?堕ろす?産む?産んだとしたら女の子をどうするの?」
『……そんなの、』
そのやってきたもしもの更なる未来を考える。兄や父を見ず私は悟だけを見上げていた。
普通に考えて差別はしないし、大事な家族であるのなら。大好きであった母ではあるけれど、母が私にしたようにはしたくはない。もっと正しく、呪いや恨みの血族ではない、自分の伝えたい呪術にしていきたい。
……そう、未来に願いたい。