第14章 鮮やかな日々よ
ちら、と隣の悟を見ると眉を下げ、こっちを小型犬のように困った顔をして見てる。私の目の前に座る兄がドーベルマンとしたら圧倒的体差かもしれないけれどその小型犬がイギーとしたらどうだろう?小型犬のボストンテリア…強いんだぞ?兄貴。
悟の肩に手を置き、兄の言葉に食いついた。
『騙されちゃいないよ、正気だよ。あんまり褒めると調子に乗るから言いたくないけど見た目だけは確かに良いよ?』
「えっ褒めて調子に乗らせてよ?」
ぱあぁっ…!と背後に華やかなエフェクトが見えるくらいに喜んでいる悟。ほら、すーぐ調子に乗る!
悟に向かってゆっくりと首を横に振った。
『悟、シャラップ。調子こかない。
……守ってくれそうもないって兄貴は言うけれど、実際強いから私何度も助けられてるし、父ちゃんや兄貴よりも強いからね……この人は』
目の前のふたりが目を丸くして驚いている。私の隣でクス、と笑う声。
「ふふっ……ハルカ、ありがとさん!そうだね、僕、最強だもん」
頭に手を乗せられ、そのままちょっと撫でた後に頬にちゅ、と軽く口付ける悟。父は微笑ましいと思ったのかへらっと笑っているけれど問題が隣だ、目をかっぴらいて頭を抱えてる。
「アーーーーーーッ!!!!俺の妹○△※¶~っ!」
『兄貴うるさい、人間の言葉…いや、標準語喋って。
悟、ちょっと!母さんの前でキスすんなとは言ったけど、頬も駄目でしょ!人前でさ、唇も頬も駄目だからね?兄貴おかしくなってんじゃん!アザトースをガン見したみたいにSAN値直葬発狂状態だよ!』
口笛をピュッピュー、と吹く悟。多分この修羅場(?)をめちゃくちゃ楽しんでる感があるんですけど。
ここまで不服そうな感じであった悟は何かを掴んだらしく、にこにこと楽しげで片手で私をちょいちょいと呼び耳打ちした。
「なんかお義兄さん、猛犬注意の家の前通った時にめちゃくちゃバウバウ吠えまくる、鎖に繋がれたドーベルマンみたいね?」
『……ンッフ!ちょ、やめてよ…ふふふっ!』