第14章 鮮やかな日々よ
リスのようにもりもり食べていた手が止まる悟。一箱に入っていたフレバーをとっくに一周して、二周目…お菓子の周回を始める手にはいちご味の個装。
『いいから。ほら…景品は悟君なんでしょ?好きにして良いって言うならまず立って欲しいんだけど』
手に取った剥きかけのミルフィーユをそっと置き、椅子からゆっくりと立ち上がる悟。ちょっと怯えちゃいないか?
怖いことはしない、その表情をなんとかするために私は笑いかけた。
『大丈夫、怖くない。ちょっと二歩程前に来て下さる?』
「えっ、やだこの風の谷の姫姉様…ボディーブローとかしてこない?みぞおちパンチとかされたらミルフィーユ出ちゃう…」
『しねえよ……?』
悟の警戒心に思わず笑顔も真顔にもなるわ。
私の要求通り、二歩進み椅子から離れた所で悟の胸にばふっ、と飛び込んでその背に腕を回してぎゅっと抱きついた。
『沖縄っ!』
「はははっ、もー、そう来ちゃう?はじめから言ってよー!」
よろめきそうな所で悟は私を抱きとめる。悟の胸板に寄せた顔を上げた。きっと喜びが抑えきれてない、嬉しくってしょうがない。
始めこそ驚いた顔の悟も嬉しそうに笑ってくれた。
『ありがとうっ!沖縄行きたい!来週楽しみなんだけど!
悟っ大好き!』
「う…うん!はあー、良かった…!ハルカにこんなにも喜んで貰えて良かった!恋人、いや夫冥利に尽きるね~!」
ぎゅっと抱きしめ合う私と悟。こうして恋人としての10回デートしたら…は、もう戸籍上は夫婦になってしまっているけれども沖縄に決定した。