第14章 鮮やかな日々よ
『ふーん?ちなみにどこ?ヒント欲しい』
ふっ…と笑う悟の口の端にミルフィーユのかけらが着いてる。またやんちゃ食いしてんなぁ、この人ったら。
可笑しくて笑いながら、自分の口元を指差した。ここに着いてるぞ、って。
『口の端にミルフィーユ着いてるよ、スパダリ』
「ちょっぴりお茶目な一面もあるスーパーダーリンとか、完璧そうに見えてあざといプリティー五条悟…自分でも怖くなっちゃうな……」
『その自己肯定力が怖いわ』
指先で取って口に入れる悟は、甘ったるそうな紅茶を口にした。
「逆にハルカはさー…どこだったら良いって思うよ?当てられたらピタリ賞として僕を好きにしても良いよ…?」
わざと色っぽく言ってみせる悟。ノールックでまた違う味のお菓子に手を伸ばしていた。
好きにしても良いって言われてもどうもしないしなぁ…。女の子が男の子に言ったらまた違う展開だったろうに私は別に飢えてるわけじゃないし。セックスは午前中にしてとりあえず今の時間帯にしたいか?なんて言われたら、どうせ夜もするなら今は良いって答えになるし。
なら大福買ってこいよ!とか出掛けられない自分の代わりに行かせるくらいしか思いつかんわ。
『なんとも言えないピタリ賞だなぁ……パシリにしたろ。
うーん、テッテーランドやシーとか?』
「ブー!不正解!……僕をあんな事やこんな事出来るなんてなかなか無いじゃない?無事当てて喜んで貰いたいな~!」
『あんなことやこんなことはドラえもんのオープニングで充分でーす。
じゃあ…えーっと、海外とかじゃないよね?となると国内?』
こちらの考えとは斜め上の方向に行く時があるからな、悟。うんうん頷いてお菓子をサクサクと音を立てて食べている。
『……海』
「ンーオシイッ!」
惜しい。予定までしてるとなると…。脳裏に浮かぶは青い空、エメラルドのような海…、日本の南国。
『沖縄?』
目を見開き、カップを傾けた悟はカチャ!とソーサーにカップを乱雑に置いた。なんだか高そうなカップをそう雑に扱って良いのかと思うけれど。
ウインクしながら両手の人差し指と親指を立てて、一度私に撃つフリをした。
「正解!景品は僕、悟君になります!」
『もう頂いてるからいいでーす!…ってマジ?沖縄行くの?』