第14章 鮮やかな日々よ
ゆっくりとした足取りで服も眺める。
スーツとかかなり高そうで歌舞伎町にこれ着て行ったら悟はホストかな?と思われてしまいそう……。
ピンクの服とかあるし。これ、着てるのとか見たことないけれど着るの?つなぎとかもある。
部屋を見渡せば各地の細かいお土産も飾ってあったりした。そりゃあ各地に任務で足を運ぶから悟ならその場のノリで買うだろうけれど。物は多くても整頓がされていて清潔感あるなぁ……
となると物置にしつつ、私と被らないようにトイレやお風呂に使ったりする感じだろうか、とベッドに腰掛けた。
──結論。部屋という名の物置、以上。
『なーんだ…』
ばふ、と座ると僅かに軋むスプリング。部屋の空気が大きく動いて悟の香りに混じってほんのりと香水の香りもした。
ベッドに座って見ればちょっとごちゃごちゃしているのになんだかこの空間は大変落ち着くな、と思う。
自分の部屋のお隣ってだけなんだけれどなー、と座った状態からベッドに転がった。
『……』
すんすん、と鼻を鳴らす。悟の香りが強くして。そりゃあ悟の部屋だから部屋の主の匂いくらいするもんなんだけれど。
まあベッドとなりゃ一日で一番接触のある場所だから香りが残るっていうもので。私が居なかった期間にこっちで寝たんだろうけれど……。
手探りで枕代わりに使われてるクッションを引っ張って抱き枕の様に抱き寄せた。
ついさっき本人を送り届けたばかりだけれどなんだか寂しいというか。そして香りに絆されてクッションでさえも愛おしいというか。寝不足でもないのに落ち着きすぎて目がとろんとしてきてしまった。
ふわぁ…っ、と欠伸をしてぎゅっと抱きしめながらうとうとと微睡んでいく。そろそろ部屋戻んないと悟が帰ってきちゃうな、という思考があるのに。ホームルーム終わったら速攻帰るって実践する人だもん。
案の定そんな事を思っていれば隣の部屋が騒がしい。バタン、とドアの開閉音と共にこっちの部屋まで聞こえる声量で"ただいマーリンはグランドクソ野郎!"と悟の声。やめてさしあげろ、スキルマな彼はパーティに居ると強いんだから。
そしてドタドタと散歩から帰った犬の様に部屋を走り回る音。見えずとも分かる、白ポメが部屋で駆け回る姿。
帰って来て早々に元気だなぁ…と微睡みながらのんびりしていると悟の様子がおかしい。