第14章 鮮やかな日々よ
悟の重ねた手から片手を引っこ抜き、思わず甘く呼び合う私達を想像してしまい、両手で顔を隠した。
悟にハニーって呼ばれて私が悟をシュガーって教室で言ってたり。周囲の視線が痛いに決まってる!突き刺さるその視線、絶対零度!即死レベルなんですけれど!
顔を隠す中でククッ、と笑った眼の前の男、指の間を開け、目だけ隠すのを止める。
「羞恥心、上等。あまーい名前であまーい人生を歩んでこうぜっ!」
『やだー!』
伸ばされた手が私がしたように手ぐしをしていく。それが気持ち良くて、名前をどうするかって問題よりもとろけるくらいに甘い心地よさ。気持ちよくて、安心して二度寝してしまいそうになる…。
私の髪を撫でながら悟は考えている事をそのままに口に出しているようだった。
「うーんと……ハニー、シュガー、スイート、キャラメリゼ…喜久福」
『喜久福…っ!急に沸いたな、ジャパニーズ郷土スイーツ!』
突然の喜久福に私より悟だろ、とドヤ顔をしてる悟の脚に脚を乗せる。
乗せれば引っ込められて乗せられる、を繰り返す攻防戦が下半身で行われながらも会話を続けようとしたらようやく日常の朝を告げるアラームが鳴った。
甘い時間は一度止まって、ベッドから降りて……そのまま私達は会話を続ける。
それは甘いパンケーキと仕上げのメープルシロップよりも甘ったるい久しぶりの時間。それぞれに朝の支度を済ませて、ふたりだけの時の悟から、一年担任の姿になった悟。
手を伸ばして逆立てた頭をふわふわと撫でると屈んで撫でさせる悟は大型犬みたいに懐っこい。
いつまでもこうしていたいけれども私は今日は自宅療養、悟は一年の皆の元に行く。せめて玄関までは見送ることにしよう。
靴を履いて悟が振り返った。朝からテンションぶち上げているご機嫌さ。