第14章 鮮やかな日々よ
121.
ふと目覚めれば硬くない体を労るようなふかふかのベッド。傍らにはぎゅっと離さないくらいに私を抱き寄せて隣で寝てる大好きな人。顔に触れる白地のスウェットから悟の良い香りがする。
睡眠から覚めればカーテンの隙間から差し込む朝日が眩しく部屋を照らしてる。
絶望じゃない、幸せの朝なんだな、と寝起きの頭で理解出来た瞬間にぎゅっとその幸せな時間を噛み締め、ちょっと泣きそうになってきた。
隣を見ればすぅー…すぅー…と浮かんでは沈む胸。私ばかりに布団が掛けられていて、服を着てるとはいえ悟の胸下が見えている。斜め掛けになった掛け布団、風邪引いちゃうでしょうに…と引っ張って首元まで布団を掛け、そのまま悟にひっついた。
今までの劣悪な環境下での習慣で起きてしまった。あの頃には戻りたくない、いや戻る事はないけれど。救出された今、日常的な幸せは戻ってきた。起きる時間までもう少しある、幸せなこの朝の中で微睡む……このまま二度寝しちゃおうかな?
すり、と悟に擦り寄って瞼を閉じるとちょっと気怠げな笑い声が聞こえる。
「……なんだ、起きないの?」
『あれ、起きてたの?』
互いに顔が見えない。悟はばさ、と私とは反対側の片手を布団を潜って寄せてきて、頭を乱暴に撫でる。わしわしわし…と確実に髪の毛が爆発してるに違いない。その撫でる手を止めずにひたすらに撫でさせる。
「ハルカが起きるちょっと前に起きた」
『でも悟、寝てなかった?』
「いーや?完全には落ちてはないよ?
ハルカがさー…隣に居てくれる事から始まる朝って久々でね、僕ねー…なんだか嬉しくなっちゃって。このまま二度寝しようかなーって少しウトウトはしてたけど」
驚いて二度寝どころじゃない。少し体を起こすと、乱暴に撫でていた手は止まって悟も体を起こした。
そのまま私は急いで上半身を起こしてベッドに座る。悟は掛け布団を片手で掴んだまま頭にクエスチョンマークを浮かべてそうな顔をしていた。
『……完全に同じ事してんのウケるんですけど?』
「マジ?」
『大マジ』