第14章 鮮やかな日々よ
本当に騒がせた。ぺこーっ!と頭を下げると硝子は笑ってる。
「ふふ、いや、本当に生きていてくれて何より。それからもう入籍したんだって?不可抗力とはいえ、きっちりそいつに幸せにしてもらえよ?裏切られたらいつでも相談すると良い、代わりにいくらでもクズをぶん殴ってやるからな?」
『ありがとうございます、とても頼もしいお言葉です……』
硝子には色々と相談してもらって、結婚迫られてるって悩みを相談していた所で、まさかの拉致られてるタイミングでの籍を入れるとは。籍を入れてしまったのは仕方ない、保険として私も書いていたし今更届け一緒に出す!とかゴネても無駄だし……。
きっと裏切る事は無いくらいに私は悟に愛されている、と少しうぬぼれて硝子の前でふふっ、と笑って、背後の悟を振り返る。口元に弧を描きじっとこちらを見てる悟。
再会してから確信した。私は悟を愛しているからこの人じゃないと無理だ。ならばこのまま歩く速度が時々スキップしたりするような人だけれど私は悟に着いていこうと思う。
悟は硝子の方に顔を向けふんぞり返って腕を組み始めた。
「どうも、ハルカの夫五条悟です」
「ああそうそう、五条…ハルカじゃない、お前だよお前、クズの方な。何勝手に点滴中で寝ていたハルカを連れ出してんだ。起きたら先に私に報告しろって言ってるだろーが!」
落ち着き、にこやかであった硝子がカッカッ、と机から持ってきたバインダー。荒ぶる硝子のバインダーチョップが言い逃れの出来ない悟の頭部を襲う。
「いってー!角っ!せめてそこは面にしとけよー」
いくらふわふわした髪だろうが、チョップは威力を殺さない。
コンッ!と音を立て、口を尖らせた悟は攻撃された頭部を撫でていた。
それを見て笑いながら、医務室から出て今度は伊地知が居る部屋へと向かった。
確か昨日、私が車内で倒れた時の運転手が伊地知だった。急に倒れてすみませんって言うつもりだったけれど……。
伊地知のデスクに到着すると彼が体を張った潜入をした事をここで初めて私は知った。そして七海も体を張って様子を見に来ていたと言う事も。