第14章 鮮やかな日々よ
箸で唐揚げを挟んで食べようとした所で保険の話を始めたから箸をゆっくりと机に置いた。なんの話だっけ?生命保険?健康保険……保険、保険……
「だからー…もう。ハルカと僕で入籍済みなのよん。
これからはみたらいハルカじゃなくて五条ハルカと名乗りなさい」
『は?えっ………は?』
チャーハンを一口食べた悟は、カラン、と机に置いて携帯を取り出し何回か操作をした後に画面を見せてきた。
その画面を私は食事そっちのけで前のめりにじっと覗き込む。
区役所を背景に婚姻届を持ち、にっこー!とムカツクくらいにご機嫌スマイルの悟が婚姻届を指差して、隣に苦笑いした夏油。画像は次へとスライドされ、受付の女性がちょっと苦笑いする前で同じ構図の自撮り。
それを見せ終えた悟は満足げに携帯をしまい、麦茶を一口のんで頬杖をする。その動作を私はぽかーん…と眺めていた。情報が追いつかんわ……。
「……しょうがないでしょ?キミがむりやり龍太郎と籍入れられそうなのを阻止したんだから。
多分リベルタでもハルカが確認した時は未婚だったのに届け持って行ったら既婚者に変わってる!って騒いだんじゃないの?」
『う、うん??全くもってその件に関わって無いんだけれど?』
少し冷めてきた中華スープを飲みながら、悟の説明を聞く。
拾ったスプーンの柄を持って指揮者の様に振って遊ばせる悟の口元は自慢げでもある。
「僕らの結婚がリベルタ側に発覚してから龍太郎がハルカを抱くフリに行ってない筈。こっちの動きを怪しんでね。
だから龍太郎がハルカの元に来なくなった辺りからはもうハルカは僕のものになってるってワケよ、アンダスタン?」
『……』
嬉しいような……その記念すべき時に居られなかったという悔しいような。胸の奥から沸き立つ感情はなんなのか。
昨日から今日に掛けてと色々とありすぎて頭が追いつかなくなってる。じっと悟の顔を見ると、ちょっと吹き出すように彼は笑った。
「もーっ…そんな困惑した顔しないのっ!まだこの件についてはハルカの親父さんにも伝えてないし……ああ、ご挨拶については後日って連絡済みだから。ねえ?五条婦人?」
『ご…五条婦人ンン…??』