第14章 鮮やかな日々よ
『……繰り返されないようにしよーっと』
「ちぇーっ、いくらでもダイエットに協力するのにぃ~…」
コンロの火を止めて大皿に盛っていくその背を見て、油の着いた指先を舐める。白ごはんもイケちゃうのにチャーハンと来た。
栄養失調と言われ痩せているとも言われても、それはデートの度に太らされて居た…からの健康食とか間食抜きの反動かもしれない。今日から食べすぎは禁物だ、と一個食べてめちゃくちゃ美味しかった旨味を凝縮させたような茶色の惣菜(残り4つ)をガン見する。
ハイボール……唐揚げ……ハイカラ……めっちゃ、おいしいやつ…。アルコール抜きでもご飯がイケイケ……。
耐えられるのかな、この誘惑に私は!
色とりどりの具材を覗かせるチャーハンが盛られた大皿を持ち、机に置くと悟は冷蔵庫から麦茶を持ち出して私と対面するように座った。
「はーい、キミの大好きな炭酸麦茶の炭酸抜きでーす」
『わ、わーい糖質もプリン体もないぞー……
その視線、スーパードライ!』
「違うでしょ、スーパードゥラァァイ!」
『アッサッヒィ、「スーパードゥラァァイ!」』
はは、と笑って失われていた日々を楽しむ。大好きな彼に会えて戻ってきた日常は、昨日までの地獄が嘘みたいに凄く幸せで。
注がれたグラスを受け取った所でいただきます、と声を出した。
シャワー上がりもあって冷たい麦茶が美味しい、と飲んでると取らなかった唐揚げを悟は私の皿に移動させ、スプーンでチャーハンの山からひとすくいしてこちらに向けている。にこにこと楽しそうで。
かつては風邪っぴきの悟にお粥を食べさせた、あの行為が私にと向けられている。
『さっ…悟、やるのか!今、ここで…!』
「ベルトルトかよ。
はい!あーん、してあーん!」
『……マジ?本気でやんの?』
手があるっていうのにさ!両手がフリーであると見せても悟は首をゆっくり横に振ってこちらにチャーハンの掬ってあるスプーンを差し出してくる。
恐る恐るそっと少し身を悟側に寄せつつ口を開けると突っ込まれてそれを口で咥える。スプーンはすっ、と引き抜かれていった。
むぐ、と久しぶりのチャーハンを食べ始めながら、目の前の悟をじっと見た。