第14章 鮮やかな日々よ
117.
「グッモーニン!爽やかな目覚めを演出する呪術界の妖精、五条悟です。アヴァロン・ル・フェ、悟の目覚める刻。天才呪術師ルーラー五条悟のピックアップは今だけっ!」
長めの口上、最後にばちん☆とウインクをする悟。
『………朝っぱらから耳も視界もやかましいわぁ…』
眠りから覚め目を開ければ、目の前には添い寝をする上半身シャツに裸眼の悟。
三週間という期間を開けていても良く過ごした寮の部屋は忘れていなくて、私が目覚めた部屋は自室でも檻の中でも無く清潔感溢れる個室。確か医務室からすぐ近くの部屋……アガリビトの時と別荘地の呪霊にやられた時にも利用した部屋。
目の前で目を細めて笑ってる悟。
「……おはよ」
『おは、よ…』
自分の足でここに来た訳じゃない。最後の記憶は車に乗ってちょっと待ってる時だったかな。寝ていたのか気絶したのか知らないけれど、ただ眠った訳じゃないみたいで、違和感のある手に視線を向けた。もう拘束具は無くて代わりに腕にチューブが繋がれているのを見た。それで自身の体に何かがあったんだとようやく気が付いた。
そうそう、ふらふらしてたんだった、私は。
その私の視線を見て、質問せずとも答えてくれるのはこの個室に居る朝から眩しい男。
「キミ、車の中で倒れててねー、高専戻って硝子に見せたら栄養失調だってさ!ちゃんとご飯貰って無かったの?リベルタで」
『えー…結構食べてたと思うんだけれどなー…』
食べさせられてたというべきか。栄養バランスは良さそうな食事、それらをクリミアによって口にじゃんじゃん突っ込まれてた。
別に一日一食ってことじゃない。大体三食、忙しい時は二食ではあったけれど。呆れた表情の悟は私の頭に手を乗せてわしわしと撫でながらゆっくりと笑顔を見せた。
「栄養摂ってもそれ以上にこき使われてたんだ、呪術だって呪力のみを使う訳じゃないだろ?
……ねえ、今の気分はどう?大丈夫?」
『もう大丈夫、な筈だけど。お腹すいたからしっかり食べたい気分かな』
点滴繋いでいてもやっぱりお腹に入れたいわけで。ぐうぐう鳴らす前に詰め込みたい所。
私が大丈夫、と笑っていれば悟は、そっか、と笑って躊躇う事無くぶち、と点滴を引っこ抜く。
『…あ、』
驚いて治癒させるも真っ白いシーツに点滴液と血液の染みを付けてしまった。その強引な男を睨む。