第14章 鮮やかな日々よ
言葉にしてからすっきりしたけれども言わなきゃ良かったって後悔もしてる。その人が既に帰らぬ人で…悟にとってのかけがえのない大切な人だったらって。
眉を寄せ、ちょっと困った顔をしてる彼。
「あー…その事ね。といっても大したことじゃないんだけど……、」
『悟にとって大した事じゃなくても、私は知りたいんだけど。悟のその事、教えて』
通路の先を見ながら悟は話してくれた。
春日の血を引きながら、引き継がれなかった女性の話を。
その時の女性を殺害した人物が今回も関わるリベルタの者だったという事。結婚…いや、冥婚はその一家を助ける為だという事、そして龍太郎もこの春日の血筋とリベルタの関係を持つという事を。
元は龍太郎なんて名前ではなく、私の母が家を飛び出したのでリョウコの名の"龍"を一文字取った名前を付け直したのだと聞いた。私の婚約者兼養子というか。
その龍太郎は冥婚した女性の弟で、悟に恩を感じていて今回恩返しに手伝ったという話を。
「──…っとまあ、こんな感じなんだけれど。オマエがさ、僕の既婚歴について凄く悩んでたっていうのは知ってるよ。それで悩んで…運悪く今回の件に巻き込まれた。
ほんっと、トラブルメーカーだよねー、ハルカって!」
『おい、デリカシー。デリカシーってモン部屋に忘れて来てんのかー?悟は』
ケラケラ笑う悟を見て、デリカシーの無いのはいつもの事か、と肩を竦めた。はぁ、と身の回りの狭い世界での壮大な話にため息が出る。
嫉妬するような、誰かを愛してからの婚姻かと思ったけれど……違かった。だったら尚更早く言って欲しかったけれど。
『なんだか世界って狭いね……』
「んー?そう?」
……物事が狭い身の回りで起こってただなんて。
感覚的にいつも通る道以上の領域に足を進める。あちこちで呪術が使われていて戦ってるのに私の手を引く悟は見向きもせずにまっすぐ進んでいく。どこかで野薔薇達も戦ってるはず…。
私がきょろきょろしていたからだろうか、手を引きながら"人質の救出が先だよ"と言った。
カツ、カツ、カツ…と私達の靴の音と背後の戦闘音。
目の前の通路の奥…ガラスのドアが見える。そのガラスの先にはまるで絵画のような鮮やかな風景。眩しい天然の明かり。車が通り、人が行き交ってる。
ドアを悟が開けて、私はそのまま外に出た。