第14章 鮮やかな日々よ
「……血、すっご。その服汚れてるからここで脱ぎ捨ててきな。僕の服貸すから」
『死なない程度に治療する度に血は補充出来てるみたいなんだけれどね……』
輸血とかしてないし。
私が自分で服を摘む。真っ赤を通り越して布に染み込んだ血液は、より空気に触れやすくなっていて色が鮮やかな赤から黒に近付いて来ている。
確かに着てる私もベタベタして鉄の匂いして不快なんだし、抱きつく彼にも不快感ありそうだし。何よりもこの服をいつまでも着ていたくない。私は私、ハルカであって、"ラブ"と呼ばれた奴隷の立場の服だった。
『じゃあ、悟の服借りようかな』
ふふ、と笑って服を脱ぎ、床に捨てれば血を大量に含んだ衣服はびちゃ、と床に落ちる。
悟を見れば黒い上着を脱いでその中に来ているシャツのボタンに手をかけていた。今の私は上半身は支給されたブラジャー、下は少し上着から伝って染みていた血がついたズボン。
ブラジャー自体も真っ赤に染まってで気持ち悪い、元は少し黄色みがかった色だった筈。
それを外して床に落とせば悟はぴゅう、と口を鳴らす。
「いやあー…大胆だねぇ~、いいおっぱい晒しちゃってさ、でもちょっと前より痩せてない?脇腹で洗濯出来ちゃいそうだね…。
ねえ……良いもの見せてくれたんだし、せっかくだからそこの布団で一発えっちしてく?」
いつもの悟だ、さっきまでスンスン泣いてたのに。元気に性欲を発揮して、片手の指先で丸を作った所にもう片手の人差し指を挿れて"やらないか?"と誘ってる。
『……ヤッとる場合かっ!』
今はふらふらの身体、そんな体力は私には無かった。もうちょっと元気になったらしたいけれど。
『服、はよ。はよ脱げや……脱がすぞ?』
「もー…急かさないでよ、キミって奪衣婆?すけべ!えっち!町娘を脱がすのに定評のある悪代官!
なーんてね、はい」
『…チッ、悪代官は言い過ぎなんですけど』
あれは帯回しに定評のある、でしょうに。
悟から受け取った瞬間に体温の残ったシャツ。
素直にありがと、と言ってそのままに腕を通してく。
渡されたシャツは着ても僅かに体温が残っていて羽織った瞬間から安心感に包まれた。そして好きな人の香りに抱かれているような感覚。
ボタンを留め終えて今の自分を見ると、借りたばかりのシャツの所々にあちこちうっすらと血が滲んでる。