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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第14章 鮮やかな日々よ


ゴォ…ン、と建物全体が一度揺れた。きっと皆が構成員の術師と戦ってる。
それでも私達は余所見が出来ずにただお互いの目を見ていた。久しぶりに見る悟の瞳はやっぱり綺麗で…。長細くて鉄格子の入った、いつも見上げる遠くの空じゃなくてこんなに近くて薄暗い檻の中でも澄んだ空の色をしている。
申し訳無さそうなハの字の眉がいつもの彼らしさを感じさせない。

「迎えに来るの遅くなった、ごめんね」

『待ったよ、凄く待った。諦めそうにもなった。ほんっと、責めるレベルの遅刻だよ……大遅刻』
「ごめん…」

『……でもね。助けてって言った時にあんたが丁度来てくれたから、助けを求めた瞬間に悟がこうして助けてくれたから…』

今の私は血塗れで、悟に受け入れられるか心配だけれど、震えながらそっと手を広げた。
そんな私を見て、悟は少し優しく笑って躊躇う事無く私をぎゅっと抱きしめてくれる……きついくらいに。
でもその分密着して悟の体温を感じる、恐怖や絶望していた私の身体を優しく温めてくれる温度。

至近距離で上から覗き込まれる整った顔。吸い込まれるような青、お互いの鼻先が少し触れた。

「……じゃあ、僕の大遅刻。オマエはキスで許してくれるかな?」

『うん、いいよ。許してあげる』

「ん、ありがとう」

ふふ、と笑った時の吐息を感じた直後に食らいつくそうなくらいに深い口付けをした。
かぷ、と唇が甘噛みするようにもう一度角度を変えて…、唇が離れた後、困ったような眉をして優しい笑みを浮かべた悟は、そのままぎゅうっと抱きしめてくれた。

私も久方ぶりに悟の背にぎゅっと腕を回した、ぱっと見は細身であるはずなのに広くて頼れる背……暖かい。ずっと、ずっとずっとこうしていたいくらいに離れたくない。

背中がベトつく血でぐっしょりと濡れているのに構わずに力強く私を抱きしめている悟。モノクロのような記憶に悟の香りが足されていく、そう…いつもこの人の香りに包まれていたんだった。
朝、起きて悟を感じて、寝る時もこの人に包まれていたんだった。記憶に日常の幸せを思い出してきた。
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