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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第14章 鮮やかな日々よ


出来る限り右に寄ればワイヤーがピンと張り、鉄格子に縦に並ぶ。悟は片手でワイヤーを一箇所に纏めて小さくよし…、と呟き片手の指先を出した。
指先には丸く赤い玉の様な物が周囲に風を巻き起こしながら渦巻いてる。久しぶりに感じる風が私や悟の髪をなびかせ、そして涙の跡を乾かしていく。

「オマエを閉じ込める鳥籠も、痛めつける為だけのワイヤーも邪魔なものは僕がぜーんぶ取っ払うから……、術式反転…"赫"」

人が通り過ぎる時の風以来の、凄まじい風とバキンッ!という音に目を瞑る。ビリビリと電撃ではない、風圧による高速で震えた衝撃が、腹部に繋がれたワイヤーにも響いた。
目を閉じてるうちに風は収まった。そして次に目を開けた時には、先程の術で檻も何本かの鉄格子が破壊され、檻の内側に悟がやって来ている。鉄格子と一緒に床がえぐれる様に無くなり、天井付近に窓のある壁の下側に丸い穴が開けられていた。
カッカッ、と音を鳴らして私の側に来た悟。にっ!と笑って手を広げておいでと言ってるようだけれど。

もう私に拘束具なんて無い。檻だって悟が破壊してる。ワイヤーも千切れた。
千切れてもまだ、腹部から短くなった物が出ていて、ワイヤー留めが背に付けられたまま。

『……っ、』

「かなり…痛そうだな、ソレ」

よた、と少しよろめきながら腹部に手を当てる。
助けてくれたのは嬉しいけれど、強引過ぎて一部のワイヤーの食い込みが酷く、小さなワイヤー横の穴が広がって出血が多くなってきていた。
ずくずくとした脈打つような激痛の中で押さえつつ、手探りで服の中……背中の方からワイヤーを少しずつ引き抜いていく。
一本ずつ、ズルズルとゆっくり引き抜きそのまま床に落とせばかしゃ、と音を出し血が落ちたワイヤーを縁取った。

「僕が引き抜くの手伝おうか?」
『い、い……っ!少しずつじゃないと余計に痛いし』

ずりゅっ、と一本ずつ抜き取り5本全てを抜き取れた私は治療を終えて久しぶりのため息を吐いた。
病院着がもう真っ赤だ、血塗れで鉄臭い。でも着替えなんてない。
悟を見るとらしくない顔をしてた。いつもの悪ふざけをする楽しそうな余裕な笑みは無い。

「……久しぶり」

『うん、久しぶり』

「元気にしてた……ってワケじゃないね、こんな状態じゃあさ」

『うん。ずっとこの調子だったから……』
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