第13章 磨りガラスの想い出
その3人の生徒達は肩を上下させることなくただ佇む大人2名の内のひとりに注がれている。
呆れたような視線を親友に向けるのは袈裟を着た夏油。
遠くでどったんばったん忙しそうな物音が聞こえる。また他の呪術師がここに来てるのかも…。
夏油は私の方を向いて立ち止まったままのアイマスクの男から、クラスメイト3人の方を向いた。
「3人共、ここはきっとなんとか出来るから上の階の人達を手伝って来てくれないかな?私も戻って構成員の拘束を手伝う。
……くれぐれも気をつけて行くんだ」
「「了解!」」「うっす!」
虎杖によるサプライズの電気ショックの痛みもかなり引いて、教師の姿の悟を見上げる。彼はただ黙っていた。
……ピリピリとした空気を纏って。
「悟。彼女が酷い目に遭っているからって構成員を殺すのは止めるんだ。彼らはちゃんとした処罰を受けさせるべきで、まずは怒りよりも彼女を優先しなよ。
ハルカの保護が優先、構成員については彼女の保護が完了したら、だ。分かったかい?」
「……」
黙ったままの悟に、夏油は返事は?と悟に聞く。
悟は口をゆっくりと開いた、それは久しぶりに聞く彼の声で。
「……ああ、分かった。分かったよ、傑…」
「ふーっ…なら、良かったけれど。
ハルカ、無事…というには少し状況が良くなかったようだけれど。最悪の状態にならない内にここに来られて良かったよ。
これ以上、私がここにいたら邪魔になってしまうからね。また、後で」
私に微笑み、ウインクをしつつ軽く手を振る夏油。拘束されて触れない手、私はひとつ頷くと夏油は来た道を戻っていく。
鉄格子を隔てて、私と悟はようやく再会を果たした。