第13章 磨りガラスの想い出
私は呪いが祓われるのを何度も見てきた。強い呪霊と戦い祓われていくのも。
このリベルタという組織、全員と言わずとも呪術師(呪詛師に分類されるんだろうけれど)が何人も居るというのも知っている。
何故人間が人間を殺すのかが分からない。その疑問をばねにして私は膝を着き、その裏切り者と呼ばれた男の腕を掴み、治癒をしていた。
ミチミチという音と荒い呼吸。そしてボスの笑い声。
「そう、言われなくても分かってらっしゃる。流石は"ラブ"、そのまま実験を続けられるように触れていて下さいね。
では、本番はここからですよ!」
さっきのは何なんだ、と見上げた時にはボスは男の髪を片手で掴み、もう片手で刀を振るった。
ブシッ…!とスプレー状に飛び散る血液を見て、直感的に治癒をした。手を止めてはこの人が死ぬ…!
「ああっぐぁ…っ、」
ボスはほお?と声を漏らしてクククッ、と笑っていた。
私の頬をいくつかの血が下へと向かって流れ落ちていく。今、死んだ人間を私は蘇生してた……。
助けずにそのまま死なせた方が良かったとか、治癒をして何度も死ぬ経験をさせるだとか…それは良い事なのか悪い事なのか私のしているこの行為について考えなくなかった。
「死にたては蘇生が可能、と……フフッ、
フェーズ、2」
ぐっ、パ!
追加するように血飛沫が顔に掛かる。治しては呻く二度死んだ男。
「フェーズ、3」
ズシュ、
ぼたぼたと私の服に顔から垂れた血液が落ちていく。血のシャワーは時に口に入り込んで鉄の味がして。この光景と逃れる事の出来ない味覚に吐き気がする。
「たす、け…っ」
私はどう助ければ良いんだろう、と目の前の光景を見たくなくて視線を下に向けた。
「フェーズ、4…」
斬った首、髪を掴んで時間差で戻すと繰り返し、何度も回復されていくこの人の生き地獄。
4度の生死を彷徨った後に興味深そうに鼻で笑ったボスはズバッ、と斬った後の頬をパンと叩いた。
ゴ、と重い音を立て床に転がる首は斬り口から血を撒き床に血溜まりを作ってる。
見上げたら胴体には、君臨すべき物が無くなった私の掴む頭部の無い体だけ。天井に向けて噴水のように、脈打ちながらピュ、ピュッ!と血を吹き出して指令を与える脳へと送り続けようとしてる生命活動。