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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第13章 磨りガラスの想い出


113.

私は医務室のベッドに腰掛けたままに、家入さんが松葉杖をベッド脇に立てかけられるのを見ていた。
27年間、ずっと私の体の一部であった見慣れたものが無くなっている。腰掛けたままに自身の太ももを見る、そこまでは同じ。その先については左側は通常通り、けれども右側は膝から先は無く包帯がきつく巻かれている。任務でのミスではなく、これからの任務の為にわざわざこうするようにと私から頼んだ欠損。

無くなってしまったその場所に視線を落とす、そんな私に両手をズボンのポケットに突っ込み、腰を曲げ覗き込む軽薄な男。

「えっ、マジで切ったの……?笑えねー…」

「あなたに笑って欲しくてやったものではありませんよ。
はい、マジで切りました。五条さんがリベルタのアジトに向かえないのなら、次は私が行くべきでしょう。しばらく一緒に行動をしていない私なら顔が割れておりませんし」

五条さんの知り合い経由から紹介を受け、そこから連絡はつけてある。ハードタイプのリュックサックを五条さんが口を尖らせながら座る横、ベッドの上に置く。

「僕だって顔が割れてなきゃ行ったんだけれどねー…だってさ、僕の奥さんだよ?本人、知らないと思うけど」

「呪術界で有名でしょう、あなたは。それに先に潜入してる方に合流する前に暴れるんじゃないですか?ああ、それから結婚の件に関してはハルカさんに後で充分に怒られてくださいね、勝手にされたのですから」

全くこの人は人生の分岐点である結婚すらも勝手に押し通したらしい。リベルタに先を越されないようにとのあまりにも準備の良すぎる保険からのもしも、を発動。軽薄でテキトーな男、この人とやっていけるかとハルカさんが心配にもなってくる、可哀想という感情が祝福よりも先に出るのは相手が五条悟という人物だからかもしれない。

ずくずくと痛む切断面。
右脚の膝から切断を家入さんに頼んだ。そうでもしないと貴重な回復班のひとりであるハルカさんに会う事が出来ない。この東京都立呪術高等専門学校にやってきてからまだ数ヶ月である彼女はもう既に重要なポジションにはめ込まれている。
ハルカさんが来る前から医療を担当していた家入さんも貴重な回復班であり、その呪術は現場に赴き、時に傷を負う我々にとって貴重なものであった。
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