第13章 磨りガラスの想い出
潜入出来ているはずの龍太郎に少し嫉妬してる。
もしリベルタのやつらに子作りしろって言われたら演技して僕の精液(シリンジに出した)をハルカの中に入れておいてとは言ったけれど。それって僕がしばらく見てない素肌をあいつに見せてるって事だ。確かに彼は僕に恩があるからって言ってるし、ハルカはタイプじゃないって言うけれどそれとは別にハルカの男として不満だ。スパイになってくれた彼には悪いけれどさ!
「もう二週間過ぎてるんだけど、ハルカ~……」
枕をパスパスパス、と小刻みに叩くも文句言う主はここには居なくて。
本気で寂しいんだよ、ハルカ。胸がむずっ、とするような寂しさを感じてスマホを取り出す。待受から恋人が表示されて、そのままフォルダを開けば寂しさは少しだけ満たされる。
彼女の居ないこの部屋も学校も一日が物足りなくて退屈過ぎた。
頭の中には彼女との想い出。こうして大体夜に急激に寂しくなりゃスマホのデータを見てしまう。
恥ずかしがるハルカや笑うハルカ、デート中に夢中になって展示物の熱帯魚を見るハルカ、お寿司をみてはしゃいでるハルカ……その時の切り取った画像は、見ただけで色んな想い出がすぐに蘇って前後になんて話してたとか思い出された。それだけで胸が暖かくなる。
今晩の分は満たされたから、携帯を置いて夜11時を過ぎた時計を見上げた。
──ハルカはどうなんだ?
僕は携帯で想い出をもう一度辿り直せる。でも彼女の携帯はここにある。僕について振り返るものはない。
彼女は僕を忘れてしまわないだろうか?五条悟という男を消してしまわないだろうか?
僕以上にハルカも寂しがってるのかな…。想ってくれていたら、意地悪な考えだけれど僕は嬉しい。
キミを絶対に迎えに行くと心に決めて、ハルカの枕を片手で掴んだ。
「……本物には敵わないんだけど」
我ながら子供っぽいよな、と思いつつ彼女の枕をぎゅっと抱きしめてゆっくりと眠りにつく。
……せめて夢の中ではキミを抱きしめられるように。