第2章 視界から呪いへの鎹
文字の並ぶ本よりも絵と文字の多い物の方が手に取りやすく、またたくさん読んだ。
もちろん、文字のみの物も読む。話題の賞を取った作品や、時々挿絵の入る軽く読める物くらいだけれど。
私が"読める"と判断したのか、私が両手で持ち上げているステップの、上段に載せる一冊目。それは本といっても墨汁含めた筆が滑っていった、紙を紐で束ねられた書物。
──前言撤回、現代小説のみ読めます。
なにこれ、という意味を込めて悟の顔を見上げる。悟はいつものようににこにこと抱えていた本を一冊ずつステップに乗せていく。
「良かった、じゃあどんどん開いてってどんどん流し読みしてこうか、春日の術式とかそういうページにぶち当たって、もし難しいなって思ったら声掛けて!
はい、これも。あとこれーこれも、あとこれも」
『あっ…え、ちょっとこれを読めっていうの?』
バサ、バササ、と次から次へと私の持ち上げているステップに乗せられていく書物。踏み台は本置き場となっていく。巻き起こる風が少しばかり本独特の紙の匂いとちょっとカビ臭さを感じた。
というか持ってたら両手塞がってるから読めないわっ!と内心思いながら床にステップごと置いた。追い打ちをかける、追加の書物がパサッ、と乗っかった。
かなり広い屋敷もそうだけれど、書物のあるこの部屋もきちんと整理がされている。その整理整頓された部屋を荒らしてるみたいだな…、と斜め上の男をちらりと見て、一冊目からぺらぺらと捲っていった。
基本的に悟が取り出すのは筆で書かれた手記。たまに現代らしい手記もある。流し読み出来るかっ!と言いたいのを唇を噛んで堪え、無茶振りを遅いだろうけれど地道にこなしていく。
捲っていけば手を組む図解などもある。祈るような手の組み方の挿絵。
『これ、そうかな…?』
引き出してはカタン、と戻す動作を繰り返してた音が止み、私の持つ書物を覗く。
「……うん、そうだね。ここの棚に集中的に置いてあったみたいだ。隣は別の血族についてが多いし春日家については予想よりは少ないね」
『えっもう隣の棚を…?』
紙面から、覗き込む顔を見上げる。すると、悟はサングラスを取り、髪をかきあげてウインクをした。
目元に力を入れて紙面に視線を移す。ちょっと私の中の好感度的なものが上がってしまいそうになる、自信持ってる人がやっちゃいけない技を至近距離で食らってしまった。