第2章 視界から呪いへの鎹
「ありますよ。しかし見た所でそう簡単に呪術を掴めるかどうかもそうですが……式髪もだいぶ消費した孫に今更"おつとめ"が出来るかどうか」
「それでも良いさ。それから今日しばらくお孫さんを連れ回させて貰うから」
「春日の者が珍しいのでしょう、今はお好きにどうぞ。けれども早めに孫から手を引いて下さい」
『……』
祖母も悟も少しギスギスとした中で、夕食ほど賑やかでない朝食の時間は過ぎていった。
****
従者である龍太郎の案内でとある一室へと案内された。
広い屋敷、移動が多いけれど本当に祖母と従者しかいない。本当にしずかで、きっとここで生まれ育った女性達はあの名前の刻まれた墓石の下で静かに眠っているのだと実感した。
母の葬式後、骨は父がひとり持っていったと聞いたから、きっと骨を埋めるのもしきたりなんだろう。
祖父は私が生まれるよりも前に亡くなっていたのだと聞いている。だからもう、春日の女系はふたりしか居ないのは明らかだった。
龍太郎は引き戸を開けて、電気を着ける。
「こちらにございます、お好きにどうぞ。血族の術、技術は盗むことも出来ませんし」
「そう、じゃあしばらくここにふたりっきりで居るから」
「何かありましたらお声がけ下さい」
トットット…と静かな中、足音が遠ざかっていく。かちゃ、という小さな音がしたのでびっくりして音の出処を見上げたらサングラスを掛け直す音。目が合ったので逸らし、ずらっと並ぶ書物に目を向けた。
『量多いけれどここ出るの何時予定?それまでになにか手がかり見つかるかなぁ』
そう言いながら壁沿いの上を見上げる。ちびという訳じゃないけれど上段は背表紙が見えづらいし、手に取らないと何が書いてあるか分からない、紙を束ねたような歴史ある書物もあった。
きょろきょろ見渡せば、2段ほどのステップがある。助かる…。
うーん、と言いながら、反対側の壁際に行かずにステップを持った私の側に立つ、悟氏。いや、効率っていうさぁ…?私の反対側からやっていけば良いんだけれど…、と見上げていれば。
悟は上段の書物を引いては引っ込めるをさくさくと繰り返し、時々引っ張り出しては腕に抱えて、その一冊を私に差し出す。
「キミさ、読書得意?」
『まあまあ?読める方かなー…?』