第13章 磨りガラスの想い出
112.微裏?
はぁっ…はぁっ……、
『……っ、や、やめっ、』
拘束具は解除されないままに頭上に両手を龍太郎に片手で固定される。そしてすぐに目の前の男は胸や首筋といった、素肌に頬擦りをし、興奮気味の吐息が掛かった。
それは悟とであればゾクゾクとしてもっとイイ事が起こるんだ、とこれからの行為に期待出来る刺激だったのに。今はもうこれ以上近付かないで欲しい、止めて欲しいという願いでいっぱいだった。悟しか知らないのに今から悟以外の男を知らされる事になる……そんな目の前の現実を見たくなくって、私はそこから逃れるように精一杯顔を反らした。
「ああ……フフッ、見られて恥ずかしいのですか?掛け布団を掛けて大事な繋がる場所は隠して上げましょう」
『あ……や、だ…やだ…こんなの、悟…っ、』
布団と共に再び覆いかぶさる龍太郎。汗ばむ片手が私の両手の拘束具ごと力強く押し付けている。
「さあ、春日家の復興を私達でしていきましょう、ハルカ様?」
悟がやるみたいに首筋に何度も吸い付き、片手が胸を揉む。
気持ち悪い、私はこいつとなんてしたくない……っ!ぎゅっと瞑る瞼。悲しくて目尻に涙も流れ出てきた。
……と必死に顔を背けていると。
胸を揉む手がするする、と頬へと行き、指先でトントン、とノックをするように軽く叩く。
愛撫、にしては……と瞼を開けた。
耳元でぞわっ、と来るように彼は囁く。
「感じて文句も言えないのですか?五条様に随分と淫らな身体にされたご様子で……
…(騒がずに静かに聞いて下さい、そして演技で良いので怪しまれ無いように行為中のフリをお願い致します)」
『……ふぁっ?』
言葉責めをする中で龍太郎は小さな声で耳元で囁き、伝える。
小さく私は頷き、恥を忍んで身を捩り精一杯に感じてるフリをした。といっても。
監視しているクリミアの見えない位置、龍太郎の耳元にこっそりと囁いた。
『(フリって言っても龍太郎相手に全然興奮もなんも出来ないんですけれど……)』
「(同じくですよ、胸に触れても肌を見てもちっともハルカ様では勃ちそうもないです。好みのタイプじゃないですからねー…)」