第13章 磨りガラスの想い出
「ええ、五条悟に婚約者を掻っ攫われ、盗んでいった彼が憎くて憎くてしょうがなかったんです。私はその為にあの家に受け入れられたというのに……。
ただ私を拒んでそれでお終いだと思われましたか?ハルカ様」
『なん、で……、』
……悟と一緒に過ごせて幸せだからと目を背き続けた結果がここにやって来てる。憎しみを言葉に乗せて。
檻の鍵を握り、ボスは檻へと龍太郎を案内してる。キィィ…と重い鉄格子に付いた扉が開いて彼の背をボスは押していた。
「行為中、邪魔でしたらワイヤーは外しても構いません。何度でも取り付けられますし」
「はっ!…お気遣い、ありがとうございますボス」
ペコリと頭を下げて檻の中へと入って来る。恐怖で言葉が出ない。ここには悟は居ない。足掻いても、反撃してもここから逃げる算段なんてどこにもない。
私の絶望した表情であろう顔を見たボスは爽やかな笑みをしていた。
「もうしばらくしましたら婚姻届の記入もお願い致しますね、ハルカ。懐妊の報告を我々一同、心待ちしておりますよ?……ククッ、あっはっはっは!」
笑いながらに靴音を立てて去っていく。
そんなのって無いだろ、全てが悪夢のようで。近付く控えめの足音は檻の前で立ち止まる。クリミアだ。檻の前に用意してある椅子にこちらを向いて腰掛けて見てる。
そんな彼女を見てから龍太郎はこのリベルタの構成員であるスーツ……ネクタイをシュル、と外し始めた。
『そんなのって……ないでしょ、』
「ああ、まるで奇跡の再会ですねぇ、ハルカ様」
乱雑に脱ぎ捨てられた靴、ジャケット、シャツ。テキパキと脱いでいく中で逃げることも抵抗も出来ない。
私の腕を掴み立ち上がらせ、敷きっぱなしの布団から掛け布団を剥ぎ取っている。
その後5度の痛みを受けてワイヤーが外され、簡易的な服も脱がされて敷布団の上に押し付けられて……。
素肌で覆いかぶさられた私は絶対絶命だった。