第13章 磨りガラスの想い出
私の腹部のワイヤーと呪術の線が繋がれた。そしてクリミアは檻に着け、呪力を込めて切り離すと庭に繋がれた犬の様に檻と私が繋がっている。
悲しい顔をしたボスは、男を見て片手を顔の横までスッ…と上げる。
……ああ、来る。逃げようのないのが。構えても痛みは決して軽減されないお仕置きが。
パンッ…!
無精髭の男が手を向けた時には、爆ぜるような音と薄暗いこの空間を青白い光が一瞬照らした。カメラのフラッシュみたいにパッ、と。
『ぐあっ……ぁっ、う、……グッ!』
私が死なない程度の雷槌が男によってワイヤーへと放たれる。今日はワイヤーを駆け上って来るような龍みたいな電気が見えた。
パン!と言う音と共に全身が跳ねる。傷口から白い煙と僅かに肉の焼ける香り。それが2、3度繰り返され私は一度食らう度に治癒を始めてる。まだ死にたくないから……でも、治すからその治癒が痛くて仕方がない。
体内の擦れたり、焼かれた臓器の修復は良い。でもワイヤーが貫いてる腹部は背中の肌が回復すると肉がめり込んで痛む。
膝を着きそうになりながら、ピンと張られたワイヤーが体にめり込んで更に痛かった。あまりの痛さに涙も出る、震える脚で立ちながら彼らを睨みつけた。
絶対にここから逃げ出してやる、復讐してやると憎しみを抱きながら。
いくら睨もうと彼らにはなんの意味は無くて満足気に笑っている……私に電気を流し込んできた男。あの顔をぶん殴ってやりたい。一番の怒りの矛先は彼だった。次にボス。
可能であれば全員を領域に連れ込んで思うがままに殺したいと思ってた。けれども何日か前……ええと、4日前だった気がしたな。白髪化した式髪から呪力を降ろすようにワイヤー越しで毎日こまめに吸われ続けている。溜まった呪力で領域展開や怒髪天が出来たろうにその反撃方法を取り上げられてしまってた。
残されるは体術だけれど両手は常に拘束済み。万全ではないし下手に動けばワイヤーで中を切って死亡!……だし。
薄っすらと笑みを浮かべたボスは手を下げて檻の前から去る。
"クリミア、朝食を。ハルカ、今日も宜しくお願いしますね"と言って。