第12章 愛し君の喪失
「そうですね…報告にあった通り、顔は垂れ下げられた布で隠されてます。手は拘束具…見るからに年季に入った縄状のもの、呪具の一種でしょうね。横顔を見た所やはり目隠しと口には粘着テープが。
それからこれは本当なのかリベルタ側の嘘なのか分かりませんが……ハルカさんの服に血が滲んでおりまして。
気になって質問をしたんです、怪我をしてるのかと。そしたらリベルタのボス、寺田は治療の際にお客様の血液が掛かった汚れです、と答えまして。
そうは言っても明らかに滲む箇所の中央に小さな穴があったのが気になりますね……」
硝子を見ていた伊地知は僕の方へと視線を向けて眼鏡を掛け直してる。記憶の中の僕が直接見ていない彼女を思い出してるのか、訝しそうに眉間に皺を僅かに寄せていた。
「そいつは何かされてるって事か?」
日下部があぐらをかいて伊地知をじっと見てる。日下部に聞かれて伊地知はひとつ頷いていた。
「まあ、そうなるでしょう。縛りや洗脳などが済んでいれば拘束は必要が無いでしょうから……ハルカさんが逆らったりしてリベルタ側に傷を着けられたりなどがありそうです。
それからもうひとつ気になった、些細なことなのですが、」
結構良い所に目が行くからな、伊地知は。
ハルカが以前よりも危険な目に遭っている事を知った後にその些細な事を聞いて皆が黙った。
"治癒に忙しい筈なのに、白髪化していない"という事を。