第12章 愛し君の喪失
『なんとなく……分かって来たかもね』
はは、と笑えてきた。エネルギーとか言ってたし吸うっていったら呪力なんじゃないかなって。
式髪は溜めておく場所だけれど、呪力は腹部から使い、全身に回すもの。専用の臓器は無いからこうやって胴体にあちこち刺してる、とか……。
ボスは嬉しそうに、そしてちょっと驚いたような表情で微笑む。けれどもさっきまでの実験の惨劇がスーツにたっぷり染み込んで正面がほぼ赤黒いスーツと化してして……狂気を纏っていた。
「ほう、そうですか。察しの良い人は良いです、説明を省くことが出来る」
ワイヤーをつなぎ、その試作品の小さなスイッチをカチ、と降ろす。
血の気が引くように、頭から、首筋から…じわじわと胴体に貫くワイヤーを通して腹部から呪力が奪われていく。
『あっ…あ゙ぁっ…っ!』
領域展開後は現実に戻ればすっからかんとなってる呪力の貯蓄。
反転術式では少しずつ失われながら戦っている。でも今回の様に急激に奪われるのは始めてで。
力が急激に抜かれていく、脚がガクガクする。
膝から崩れ落ち、その引っ張られる勢いで腹のあちこちに痛みを感じながらも失われていく力。そのままに私は意識を失った。