第12章 愛し君の喪失
「腕を頭上に上げなさい」
『……、はいはい』
実験っても腕斬られるとかじゃないだろうし…、とまで考えていた私の腹部に突き刺さっていく何か。
『………え゙、』
ドシュ、ドシュと腹部に衝撃が走った。
細い糸…いや、硬い、鉄で出来た糸。ワイヤーの様な物だ。入院着の生地にじわりと赤が着いていく…服ごと貫いてる、このワイヤー状のもの。背後に回ったボスが後ろでカチャカチャと音を立てている。
「治そうとはしない方がよろしいですよ?食い込んでより痛むでしょうから」
どういう状態…?と拘束された手をゆるりと降ろそうと、確認しようとしたらそのまま上げていなさい、とクリミアに指示をされる。まだ終わらないみたいで…。
私の腹部に5箇所、貫いてる。怒髪天の式髪とはちょっと違う。彼女はアンカーと呼んだ。
「さあクリミア、引き上げて良いですよ」
「はっ!」
ずるっ、と前方へと引っ張られるような感覚。今度は何が行われたのか。
5本分の鋼鉄の紐…ワイヤーを握りしめているクリミアは無表情で私に言う。
「安心して下さい、主要血管・重要臓器全てを避けた貫通です。ですが、この状態で暴れますとワイヤーの螺旋状の溝で重要臓器が傷付きます。暴れずに治癒しようとするのも同じ。痛みが継続されるだけでしょう」
『……っ』
ボスは片手に持った、試作品と書かれた物にそのクリミアが握りしめているワイヤーを繋いでいく。
腹の内側で感じるこの違和感、このワイヤーは呪具の一種のようで何かを吸われるような感覚を覚える。