第12章 愛し君の喪失
シャラ、と鞘から抜かれる刀身は上からの照明に白く照らされて残酷なくらいに美しく見えた。鞘を広い空間の背後に滑らせる様に投げ、ボスは両手で柄を握る。
私の肩を掴んで数歩、共に下がる世話役の女。
ボスの前の男は少し震えながら両手を前に出した。彼の喉仏が動く、緊張故か生唾を飲み込んで。
「さあ、体験学習の時間と行きましょうか!」
無邪気な声色。少し楽しんでるボスの言葉はそのまま行動に移され刀が振られた。
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「……まあ、こんなものですかね…」
眼下には部下の腕が散乱している。そして飛び散る血液。安全圏にいたって飛び跳ねてきていた。ボスのスーツは返り血で前面が真っ赤、背面は明るいスーツの元の生地が保たれている。
ここに整列している人、掛ける2の腕達。その腕が山盛りでもその持ち主たちは整列し直し腕もきっちり生やしてぴんぴんとしてる。
ボスは私の頭部をじっと見ていた。舐めるようにじーって。
『……な、なんです?』
式髪の白髪具合を見てるのが分かる。
私だって今の状態を知りたい、半分以上いってればこの場の全員を纏めて領域内に連れ込んでやりたい。
視線を私の頭から目に落として、にこりと笑った。
「ははは…、そうですね。もう少し欲しい所でしたが。流石の春日の一族、治癒に特化した者。なかなかに優秀な様で。
……あなた達体験は片付けまでがセットです。切り落とした腕は処分をお願いしますよ。
さて、クリミア。場所を移動して実験をこのまま始めてしまいましょうか」
「はっ」
私の世話係はクリミアって名前らしい。
ボスのお片付けの指令を受けて構成員達はこの惨劇のあった室内をわらわらと掃除し始めた。腕の回収とか……どうするんだろう、ゴミ収集車とかには出せないだろうし。
クリミアは構成員を眺める私の背を押す。押されつつ自分の足で歩きながら、ボスの後を付いていった。
……さっきの光景が脳裏に焼き付いてしまって離れない。拘束された手首。気が付けば指先がかたかたと震えていた。逃げる隙を探すどころじゃない、隙が全く無い。何を考えているのかさえも理解出来ない。
通路を行き、エレベーターでの移動とまた通路を歩いた先の部屋。クリミアは私の前に立った。
「では、アンカーを」
ボスが言う。アンカー…?
私から少し離れた位置から、すっ、と印を結んだ後に片手を出すクリミア。