第12章 愛し君の喪失
「悟、ちゃんと睡眠摂っているかい?痩せたようにも見える、ここの所食事もろくに摂ってないだろ?」
少し眠たい頭。ハルカの部屋の窓辺、壁に凭れて腕を組んでいた。
ハルカの部屋ではなく俺の部屋から入ってきたのは傑。今日もまた胡散臭い袈裟を着てる。心配はありがたいけど面倒くさいな…、とガシガシ頭を掻いた。
「……多少は摂ってるよ」
「そうかい?私には完全にオールしてるように見えるけれどね?私達も若くないからオールなんてもうしないほうが良いよ?」
「……うっせ、ハルカが5日も行方不明なんだ、のんびり食って寝てられっかよ」
傑は壁の穴をくぐって俺とハルカのベッドに腰掛けた。
……そう、もう5日だ。5日も彼女の姿を見ていない。出会ってからこんなに間を開けたのは初めてだった。
彼女の携帯はここにある。本来ならば土曜日に彼女の家に挨拶しに行ってたのが出来なくなった。
代わりにハルカになりきって彼女の携帯から連絡を入れる。"学校行事が入ったから、またの機会で良い?"と。
何も知らない家族はハルカを労り、別の機会を待ってるだとかがんばれよ!とメッセージを送り返していて少しばかり心が痛んだ。
「5日か……音沙汰無いんだね?」
「ハルカ本人は目撃されていなくとも、その周辺の動きはあるさ。冥さんからのカラスを通して見る、リベルタの野郎どもの動きが少しずつ分かってきてる。博物館の監視カメラもね…」
今はただアジトに行けない。以前みたいに取りこぼしがあれば何度でもハルカが危ない目に遭わされる。もっと情報を集めて行かないと。慎重にいかないと面倒くさいコース確定だ。
傑はふーっ、と長い溜息を吐いてる。
「あー…もどかしいね。根こそぎ駆除を狙ってるんだろ?」
「じゃないとこれから先により狡猾にハルカが危険に晒されていくだろ……」
「それなら万全の態勢であるべきだと私は思うよ。計画もだけど悟の体調だってそうだろう?体調が万全じゃない時に、あと一歩、もう少しで手が届くって瞬間に力がなければ届かないんだ。そこを分かっているかい、なあ、悟?」
少しの沈黙。チッ、と俺は舌打ちをした。