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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第12章 愛し君の喪失


ぴくっ、と私の瞼が痙攣した。
悟が以前言ってた。縛りはするなと。
縛りは強制というより自分の意志でするもので自分に課すもの。春日の一族は子孫を作り、自分が死んでも領域で子孫を手伝えるからくらいの軽い感じでホイホイ縛りを自らしていったのかもしれないし、時に金に釣られて縛りをしたかもしれない。今の私はそれらとは違う。

生きたい、まだまだ生きていきたい。
どっかの誰かが言っていた、人生を一日に当てはめろと。十代の頃はまだ朝日すら出てないだろって言われてたっけ。今の私はまだ朝日が登るくらいまでしか生きていない。
悟と出会ってからもっともっと楽しくなってきていた。
誰かのために縛りなんてして命を縮めてどうすんの。生きたい私は縛りなんてしたくはない。かといって、脅されて屈したくもない。

……聞きたいことはあるけれど。それはまずここから帰らなくてはいけない。

──縛りなんてするものじゃない。ただこれだけは意志を強く持っていた。

『縛りをしたらどうするの?』

「可能な限り良い待遇をさせて頂きますよ?衣食住の確保もそうですし、良い相手も見つけて差し上げましょう」
『はあ?良い相手ぇ?』

何を言ってんだ?と喧嘩腰に聞き返す。そんな私に鼻でククッ、と笑った男は自身の脇の空間……床にトントン、と指先で煙草を叩いて灰を落とした。部屋が灰皿ですか…。

「当たり前でしょう?春日の残り、子を孕めるのはあなたひとりなんですから。じゃんじゃん無計画に作って頂いて構いません。幼子達は我々組織…"リベルタ"の部下達が世話をしましょう」

ぶわっ、と顔が赤くなった感じがした。良く人前でそういう事言えるな?悟ですらもうちょっと躊躇………。
…わないか!普通に躊躇う事無く言う人だった。

首をぶんぶん振って、あの軽薄な笑みを浮かべる白髪グラサンの面影を消す。

『私には!…結婚の、約束をした人が居るんで。そういうの要らないんですけど』

はっはっは!と大きな声で笑う、リベルタの人。笑った後に一服して煙を天井に向けて吐いた。室内がもくもくとして煙たい。
スーツの内ポケットに片手を突っ込んで、銃でも出すのかと身構えるも、取り出したのは見覚えのある小さな封筒。それは悟からのポチ袋。
ガサガサと音を立てて、中に詰め込まれていた婚姻届を取り出す男。悟の名前や証人として夏油の名前が書かれてるものだった。
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