第12章 愛し君の喪失
画面に映る通知は悟からの通知。
"もし美味しそうなお菓子見つけたら買ってきて!部屋で一緒にヌンティーしませんことよ?ハルカのお嬢様"
何言ってんだこいつは。ちょっと笑いそうになって、次に新しいメッセージ、"かまちょ"と来られて寂しん坊かよ、と頬が緩む。
でもその緩んだ頬が強張った。画面に反射する頭上の人の上半身が覗き込んでいた……呪いじゃない、呪いだったらまだマシだった。覗き込んでいたのは人間…、男だ。
『……っ誰!?』
驚いた拍子に手から滑り落ちる携帯。上から覗く顎に無精髭の目立つ男はニタリと笑った。
「春日の女、みたらいハルカを発見した。単独行動だ、周りに五条悟や高専生徒は居ない……行動に移す」
僅かにノイズが聴こえ、男の耳に視線を移せばインカムが。こいつひとりじゃない、他にも居るってわけだ。
腰を上げ急いで鍵を開ける、が目の前には麻袋を持って構える以前スーパーの駐車場で見た細めの男。
構えてその男の頬を殴る、手を、腹部を鼻を。
「ぐっ、…がはっ!」
「…おーおー、やってくれんねー、女のクセに」
怯ませているうちにここから逃げ出して合流しないと…。
トイレ出入り口からの足音。隣の個室にはさっき覗いてたやつ。細めの男は片手で鼻を押さえながらも麻袋は離さず。
「ったくぐずぐずしてっから殴られんだろーが!前回も逃してるしよお!ボスに報告されてぇのか!?
手荒にして怪我くらいしたって相手は春日一族だろ、」
「しかし…」
揉めてるな、と出るに出られず一度個室を閉める。
……隣のヤツ殴って上から出口まで行けるかな…、でも式髪が…。
「こうやんだよ!」
覗いてたやつは私に片手を向けると体を駆け巡る痺れる痛み。
バリッ!という音、青白い光。稲妻と言えば良いのか、これ…。
『……あ゙…っ』
脱力感と痺れに膝から崩れ落ちる。肩を細身の男が掴んだ、男の鼻血が服に着いたのを見つつ、そのままに私はゆっくりと目を閉じていく。
ざらざらとした布の感触もあった。きっと麻袋に詰め込まれてたんだと思うけれど。