第12章 愛し君の喪失
ここで戦っているという事はハルカひとりに向けられたもの。ハルカは反撃出来なかった……狭さもあるし、相手が二人以上ならここに居る時点で詰んでる……。
携帯を取り出して連絡先をスクロールする。
「僕を疑って傷心ぶらぶらしてるって事じゃない、他のやつが絡んでる事件……そうだな、やっぱりここは春日の血族にやたらこだわるリベルタって所か?」
今日から特にニュースなどはチェックした方が良いだろ。派手な動きするぞ、あいつら。
資金集めもそうだけれど一気に客を掴める報道がありゃいちいち宣伝しなくても皆が勝手に集まってく。馬鹿なんだか賢いんだかやり方がシンプルだ。
傑にも手伝って貰おう。あと、役所関連にも目を光らせて…冥さんにも頼らないと。アジトが特定出来たら伊地知あたりを向かわせて……っと。
色んな方向へと手助けして貰う算段をして僅かに頭痛を感じる。
……疲れたなぁ。
甘いもの食べて、ハルカに触れて癒やされたい。
もうここには居ないハルカの痕跡を辿りながら電気を消して出口へと進む。博物館を出て途切れた呪力。そりゃあそうだろ、徒歩でバスだの電車に乗る馬鹿じゃない、車で攫うに決まってる。ハルカだって麻袋持ってた!と言ってたし。
臨時閉館の看板のままの博物館前で立ち尽くす。
ああ、そうだ連絡しとかないと。学長から順に連絡を入れていく。
ひとりひとりに怒られた。そりゃあそうだろ、硝子のがとくにキツかった。"無くさないようにしっかりしろ"と言ったハズだけれど?と電話越しに伝わる冷気。傑もそう。むしろ逃げられたんじゃないのかなまで言われる始末。
やっと全員に連絡をし終えた。ポケットから取り出したべっこう飴を口に入れる、すっごくシンプルな味がする。
ハルカが今日、移動中に"ん、あげる。あげるから黙ってな"と僕に渡したもの。なんか彼女、僕が騒ぐと餌付けしてくる傾向がある。子供扱いしてるのが見え見えだけれどそのままの方がとても甘えさせてくれる。抱きしめさせてくれる事も、撫でる手も愛おしい…それが今は僕から取り上げられている。
ハルカに会いたくて仕方がない。早く見つけたくてたまらない。