第12章 愛し君の喪失
大きな屋敷なのに随分と静かなのは今も当時も変わらずに。
「話は済みましたか?」
ロボットみたいにそう言って前当主のハルカのお婆ちゃんは門を締めていく。ああこの人が春日一族の最期なんだなって思いながらその場から帰った。でも実際は末裔としてハルカが存在を隠されていたって事を数ヶ月前に知るんだけれど。
んー?なにさ、恵。その春日の分家の子を刺した男、についてだって?それは当時のうちに調べて"ほとんど"を駆逐したよ。ほとんどって事は根こそぎ捕まえる事が出来なくてね。春日も居なけりゃ解散でもするだろ、くらいに上層部も考えてたみたいだけれど。
ハルカの存在がさ、東京の高専、京都の高専…そこ以外からも漏れ出してしまったか、良く調べ抜かれてバレちゃったか。おおよそ、スーパーで出くわしたっていうふたり組はハルカの言ってた特徴や会話からしてその残党の可能性が高いんだよね。今回もその残党の仕業なのかどうかは調べてからじゃないと分からないんだけれど…。
……。
既婚歴についてを説明し終えて一斉に黙る寮の通路での僕達。
「…って事は、先生の既婚歴に関係する事件なんじゃないですか?今回の件は、」
「あー……もしかしたら、いや高確率でそうかも…ね?」
聡く目を光らせる恵。
「何かグループ名が付いてるんですか?その…春日に拘ってる男の残党達の集団は」
腕を組みうん、と頷いた。あの当時の尋問ではっきりと聞いている。
「──その集団の名を"リベルタ"。呪術師が非術師の上に立ち呪術こそが新しい技術・エネルギーを生み出す理想の世界、非術師は呪術師の糧を産むもの…そんな事を謳ってるイカれた組のやつらだよ」