第12章 愛し君の喪失
春日家でも手記の残っていないものを使えてる。謎があるけれども今の所、一族ではハルカだけ使ってるし、確かにその血には独特な呪力を感じている。
博物館で足取りが消えたのは確かなようだ。後は現地に行って見ないと…!怪我をしてるか、攫われたか……考えたくないけれど、死んでる事もある。
「ああ、そういえば……みたらい、意味深な事言ってましたけどこれ参考になるのか…」
恵が悠仁と野薔薇を見て僕を見上げる。何をハルカが言ってたのやら。
「領域から帰って来てからなんか様子が変だったんですけど…俺に聞いてきたんですよ。
……五条先生に既婚歴があるのかって聞かれたんですけどこれ、なにか関係あります?」
目を見開く悠仁と野薔薇。
「え……結婚しとったんか、先生…ハルカにももしかしてそれ言わないで迫ってたの?隠蔽?」
「バツイチだったの!?はっ…こ、子持ちとかじゃないでしょうね?」
「驚きすぎだなぁ、流石に作っては居ないよ……」
恵からそんな話が出るとは思わなかったし、第一ハルカがそれを知ってる事がおかしい。
領域内であの話を知ってるとしたらあの当時に生きていたハルカのお母さんか…。そんなにマズイ話じゃないけれどちょっと気まずくて頭を掻く。
恵はどうなんです?と追い打ちを掛けた。他ふたりの視線もぐさぐさと鋭く刺さる。勘弁して欲しいなぁ、と両手を軽く上げて降参!と意思表示した。
「わーった!説明するよ~、もうっ!
……本当はね、する気もなかったんだけどねー、」
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──あれは僕が24歳だった頃。
まだまだ遊び盛りだったのにお見合いだなんて押し付けられてしまった。許婚ですら断ったってのに今度はなんだよ……。面倒くさい。会って断ってやろう、と思ってた。
京都のとある料亭。そこがお見合い会場だった。そういう雰囲気がまず面倒くさいっての。今日カラオケでも行こうかと思ってたのに。あーあ、貴重な休みが潰れた!
内心の悪態を出さずにきちんとした動作で相手を待つ。